招詞 Invocation
ジュリア Julia
女 THE Women
衣・食・住 Daily Life
戦士 The Warriors
精神世界 The Other Life
あとがき Postlude
二〇世紀のはじめ。ケンタッキー州ルーイビルに、十代半ばの小柄な女の子が、両親と暮らしていた。少女は名をジュリア・トゥープスといった。ある日、一人の男性が家を訪ねてきて、ジュリアに紹介された。
男には計画があった――わくわくするような計画だった。彼はインディアナ州の片田舎の学校に戻るつもりなどさらさらなかった。政府に雇われて、はるばるミネソタ州北辺の地に赴き、インディアンの教育にあたるのだ。その計画をジュリアに語るとき、彼の瞳はさぞ輝いていたにちがいない。
ジュリアが結婚した年は、インディアンがカスター将軍率いる第七騎兵隊中の一個大隊を殲滅した「リトル・ビッグホーンの戦い」からわずか二十五年。数百人のスー・インディアンが虐殺されたウンデッドニーでの恐ろしい出来事は、ほんの十年前のことだった。後に彼女は、両事件に当事者として関わったインディアンたちを幾人か知り、その写真を撮り、コーヒーをふるまい、彼らの言葉を学ぶことになる。
彼女は、いわゆる大西部の写真家と呼ばれる人たちの大半が見逃した、インディアン学童の目の表情といったものに目を向けるようになる。古くから伝わる文化を、それが異風の踊りや儀式であれ、日常のありふれた仕事であれ、記録しなければならないと気づくようになる。そして、いくつかの部族の人たちに好かれ、信頼されるようになる。それも、居留地暮らしが始まったばかりの、インディアンが失意のどん底に沈んでいた時代にあって。彼らの信頼をかち得た結果、ジュリアは、普通なら白人が目にすることのできない場面にカメラを持ち込み、シャッターを切ることを許されるようになるのだった。
ジュリアの写真の大半がこれまで未発表のまま眠っていたことも、一層の感興を添えてくれる。なぜなら、彼女の写真は、いわば過去からの贈り物が詰まった玉手箱、新たに発見された宝物だと言えるのだから。
世紀の終わりを迎えた今こそ、私たちは、ジュリアがレンズを通して見たものを、以前よりも一層はっきりと見ることができるであろう。彼女が真価を認めたものの大切さを、以前よりも一層深く理解することができるであろう。そして、より一層強く愛することができるであろう、彼女がかくも熱烈に愛したものを。
――第1章「ジュリア」より