人鬼雑居●目次  

序論 日中戦争と日本軍占領下の北平            伊東昭雄

 一 中国人にとっての日中戦争
 二 近代史のなかの北平
 三 日本軍占領下の北平
 四 抗日戦争の勝利と国立西南聯合大学の解散
 五 本書の構成について

第一部 人と妖怪とが雑居する北平市            于力(董魯安)

 原編者前言
 一 まえがき 人々は信じている、こんな時代が長続きするものか、と
 二 まず知識人とその世界について
 三 安藤少将と周督弁
 四 太和殿前の悲惨な事故
 五 東亜文化と支那国粋
 六 北平の住宅難
 七 日本の僧侶も日本の浪人と同じ
 八 暴徒を教徒に、礼拝堂を集会所に
 九 北平市にアヘン中毒者が増えた
 十 麻薬の運搬
 十一 北平市封鎖
 十二 中将の傲慢不遜ぶり
 十三 北平の遊民階級
 十四 英雄十一人、犬の餌に
 十五 警察犬訓練所
 十六 食糧配給
 十七 「新北京」市区
 十八 結び――最終的に勝利するのは我々である
 附記

第二部 歴史家陳垣と『通鑑胡注表微』            伊東昭雄

 一 陳垣の生涯と学問
 二 『通鑑胡注表微』について
  [イ]民族意識について――夷と夏――
  [ロ]「価値のある死に方」と「意義のある生き方」
  [ハ]隠逸――胡三省の抵抗――
  [ニ]中華思想と中国文化
 三 結び

第三部 資料

 一 董魯安教授の解放区入り(于浩成)
 二 日本への抵抗を貫いた陳垣学長(孫金銘)
 三 華北文教協会(孫金銘)
 四 『通鑑胡注表微』より(陳垣)



 本書は日本軍占領下の北京(当時の名称は北平)において占領軍や傀儡政権の支配に屈しなかった二人の知識人の生活や思想を通じて、その抵抗の姿勢について考察しようとしたものである。日中戦争については、日本・中国およびその他の地域で歴史研究が盛んに行われており、とくに最近では南京事件に多くの研究者の関心が集まっている。私たちはそれらの諸研究からたくさんのことを学ぶことができたが、「淪陥」(外国軍隊による占領)下の北京については、「淪陥文学」(被占領下の文学)についての諸研究を除き、十分な研究がなされているとはいいがたい。本書はまことにささやかな試みに過ぎないが、当時の北京市内の状況と諸問題を知るのに、いくらかでも役立つ材料を提供できれば幸いである。

 日中戦争史の研究は、当然ながら、軍事研究と、戦争を取り巻く政治や経済の研究が中心であり、戦争をめぐる文化的諸問題や戦争に様々な仕方で参加している人々の思想や意識については、十分な考察が行われているとはいいがたい。本書はそのような諸問題へのアプローチに少しでも寄与できることを念願して編集・執筆を行なった。

    ――あとがきより


→目録に戻る