[目次]
二〇世紀マルクス経済学と宇野理論の学史的位置――宇野経済学の科学性 鎌倉孝夫
二〇世紀はヘーゲルとマルクスをどう超えるか――資本の弁証法 関根友彦
価値論争と宇野理論――現代社会分析にとっての有用性 山口重克
恐慌理論の再構築――宇野体系の限界をどこで超えるか 侘美光彦
現代資本主義と段階論――経済的自立性を喪失した過渡期の資本主義 榎本正敏
世界農業問題と現代資本主義――変容する資本主義の分析視角 犬塚昭治
アジアの経済危機と現代資本主義のゆくえ――グローバリゼーションのなかでの制度摩擦 野口真
宇野理論の構造と現代――体制問題の焦点としての現状分析 降旗節雄
コミュニズムからコミュタリアニズムへ――現代社会哲学におけるマルクス・宇野理論の可能性 青木孝平
『資本論』と社会主義――宇野理論を社会主義論にどう活かすか 伊藤誠
宇野弘蔵年譜・著作一覧(青木孝平)
ソ連型社会主義の崩壊とともに、マルクス主義も歴史的使命を終えたものとみなされがちで、マスメディアではもとより、労働運動や社会運動、あるいはそれらにもとづく政党活動でも、資本主義市場経済の秩序そのものに批判的に対峙する理念がたてられにくい。学生運動も沈滞を続けている。そうした背景のもとで、アメリカの主流派経済学の影響が強まり、大学などでも学問の自由がせばめられ、マルクス学派排除への傾向がめだつ。
こうした歴史の重圧に抗して、マルクス理論の新展開への再構築をどこからすすめるべきか。本書は、戦後の日本の社会科学に独創的なマルクス経済学の再構築をこころみ、われわれに大きな学問的示唆を与え続けている宇野弘蔵生誕一〇〇周年を記念する企画として編纂されている。思い返せば、宇野は、戦前の軍国主義下でのマルクス学派の冬の時代に、学問的な思索とその理論的体系化への営為に沈潜し、戦後の鮮やかな著作活動への基盤を整えていた。あるおりの座談のなかで、学問的に深く沈潜することが大切だといわれたことが、いましきりに想いおこされる。
日本に生じている冬の時代とはちょうど逆交差して、欧米にはマルクス・ルネッサンスが進展し定着してきている。昨秋のBBCオンラインの世論調査で、終わろうとしているミレニアム最大の思想家として、アインシュタイン、カント、デカルトなどをしりぞけてマルクスが首位を占めたのもこれに連動しているといえよう。そうした欧米マルクス学派の再生運動のなかでは、宇野経済学によるマルクス理論再構築への試みも、非教条的学問的気風を共通の基盤として、ソ連型マルクス主義理論と主流派新古典派理論とにともに対抗する研究の発展に資するものとして注目を集めてきている。日本におけるマルクス学派に危機的な冬の時代に、宇野経済学を活かし、マルクス理論の再構築による新たな発展をめざすには、こうした欧米マルクス学派との問題意識の交流と協力もさらに重視してゆくべき一契機であろう。(伊藤誠)