世界の文学史上まれにみる奇書を研究する
◆スターン文学のコンテクスト/伊藤誓著/法政大学出版局
優れた言葉の饗宴の中にいるような充実感
◆人類知抄 百家言/中村雄二郎著/朝日新聞社
植民地支配の経済的側面の研究
◆イギリスのインド統治/松本睦樹著/阿吽社
全編良質なミステリー的おもしろさ
◆バベルの謎/長谷川三千子著/中央公論社
ユーモアあふれ、魅力のある文章
◆倫敦 ロンドン! 倫敦 ロンドン?/長谷川如是閑著/岩波文庫
「漢民族論」など三つの巨視的な考察
◆巨大国家 中国のゆくえ/矢吹晋著/東方書店
画家、コレクター、骨董屋を訪ね、魅力を探る
◆インド ミニアチュール幻想/山田和著/平凡社
この社会から抜け出す方向は何か
◆市場システムを超えて/高橋洋児著/中公新書
詩的世界の普遍性を教えてくれる
◆古典を読む 万葉集/大岡信著/岩波同時代ライブラリー
子ゾウは鼻をふんづけて転ぶそうだが
◆ゾウの鼻はなぜ長い/加藤由子著/講談社ブルーバックス
市場経済について考える刺激を与える
◆制度と組織の経済学/河村哲二編著/日本評論社
時代のダイナミズを広い視野で描く
◆近代イスラームの挑戦 世界の歴史 20/山内昌之著/中央公論社
美濃部憲法学は危機をとらえきれなかった
◆日本憲法思想史/長尾龍一著/講談社学術文庫
自然哲学から数学、自然科学へ
◆古代ギリシア科学史の旅/高野義郎著/丸善ブックス
広い目配りで描く時代と文学
◆日本の大衆文学/セシル・サカイ著/平凡社
現在のパリを形作った歴史的な大事業
◆フランス第二帝政下のパリ都市改造/松井道昭著/日本経済評論社
軍事と外交の天才が惹かれ合った
◆ナポレオンとタレイラン 上・下/高木良男著/中央公論社
観客の一人のように舞台を楽しめる
◆古典を読む 心中天の網島/廣末保著/岩波同時代ライブラリー
イギリス史の複雑さと底の深さを知る
◆ジェントルマン資本主義の帝国/P・J・ケイン/A・G・ホプキンズ著書/名古屋大学出版会
わくわくするようなおもしろさ
◆現代日本語文法入門/小池清治著/ちくま文庫
昔の宿場をしのばせる写真もある
◆「広重五十三次」を歩く 上・下/土田ヒロミ・写真/NHK出版編/NHK出版
思わず声を上げるおもしろさだった
◆日本文壇史 全18巻/伊藤整著/講談社文芸文庫
従来の世界史に根本から反省を迫る
◆世界史とわたし/梅棹忠夫著/NHKブックス
なぜ「暑帯」ではなく「熱帯」なのか
◆近代日中学術用語の形成と伝播/荒川清秀著/白帝社
英伝記文学の面白さを存分に生かす
◆岩波=ケンブリッジ 世界人名辞典/D・クリスタル編集/岩波書店
「自分」を操縦する技術を知る本
◆アラン 幸福論/アラン著/岩波文庫
“DNA万能説”に徹底反論する
◆さよならダーウィニズム/池田清彦著/講談社選書メチエ
戯曲で迫る江戸の天才儒学者の実相
◆富永仲基異聞 消えた版木/加藤周一著/かもがわ出版
西欧に対する憎しみと愛情と
◆逆光のオリエンタリズム/青木保著/岩波書店
至れり尽くせりの“ビジュアル本”
◆図説 横浜外国人居留地/横浜開港資料館編/有隣堂
最高の文学作品のありがたい道案内書
◆「旧約聖書」がわかる。/アエラムック/朝日新聞社
発想の新鮮さを失わない論文集
◆東西交渉史論/宮崎市定著・礪波護編/中公文庫
刺激に富む壮大な歴史仮説の展開
◆文明の多系史観/村上泰亮著/中公叢書
多くを教え、生き方を考えさせる良書
◆ブッダ/宮元啓一著/光文社文庫+ブッダの人と思想/中村元・田辺祥二著/NHKブックス
歌うように踊るように楽しい講義
◆無限論の教室/野矢茂樹著/講談社現代新書
社会とともに動いていく法の姿
◆社会のなかの裁判/大野正男著/有斐閣
「近代」を相対化する新鮮な歴史観
◆アジアと欧米世界 中央公論「世界の歴史」 25/加藤祐三・川北稔著/中央公論社
おもしろく内容の充実した 20編
◆日本の名随筆 別巻 94 江戸/田中優子編/作品社
「偉人」の多方面な業績を顧みる
◆菊池寛の仕事/井上ひさし・こまつ座編著/ネスコ
維新への胎動を生き生きと描き出す
◆英国策論 遠い崖−アーネスト・サトウ日記抄3/萩原延壽著/朝日新聞社
学問的な節度と確かさの快さ
◆日本語の系統/服部四郎著/岩波文庫
いま“売れている”その理由は
◆バルザックがおもしろい/鹿島茂・山田登世子著/藤原書店
複雑な現実を的確につかんで分析する
◆東南アジアを読む地図/浅井信雄著/新潮社
未来への示唆に富むその生き方
◆アーミッシュ/アーミッシュの食卓/菅原千代志著/丸善ブックス
感服のほかない中学生の論文
◆四人はなぜ死んだのか/三好万季著/文藝春秋
不思議な感慨がある社会主義者列伝
◆フィンランド駅へ 革命の世紀の群像 上・下/エドマンド・ウィルソン著/みすず書房
歴史のおもしろさを堪能する
◆『新約聖書』の誕生/加藤隆著/講談社選書メチエ
懐かしさいっぱいの戦前の文庫本
◆文庫博覧会/奥村敏明著/青弓社
多彩な種類と楽しみ方を伝える
◆中国たばこの世界/川床邦夫著/東方選書
20世紀最後の年に読むにふさわしい書
◆西暦はどのようにして生まれたのか/H・マイアー著/教文館
一服の清涼剤のようなその存在
◆松平春嶽のすべて/三上一夫・舟澤茂樹編/新人物往来社
悪罵の風潮に抗して理論を評価
◆「スターリン言語学」精読/田中克彦著/岩波現代文庫
文人海軍中佐が日本に見た独特な文化
◆イタリア使節の幕未見聞記/V・F・アルミニヨン著/講談社学術文庫
名画修復作業の衝撃的な報告書
◆よみがえる最後の晩餐/片桐頼継、アメリア・アレナス著/NHK出版
東アジアの中で見えてくる姿
◆日本文化交流小史/上垣外憲一著/中公新書
活動弁士から国際化までを明快に
◆日本映画史 100年/四方田犬彦著/集英社新書
浮き世の雑事をしばし忘れる
◆新編 学問の曲り角/河野与一著/岩波文庫
西南戦争はなぜ起こったのか
◆廃藩置県/勝田政治著/講談社メチエ
不器用な生を絵に描いたような男
◆随筆滝沢馬琴/真山青果著/岩波文庫
高度な機能が美しさに昇華する
◆日本初「水車の作り方」の本/吉田燿子・文、寺垣豪憲・画/小学館文庫
対象への深い愛着を感じさせる
◆カント『純粋理性批判』入門/黒崎政男著/講談社選書メチエ
旅費や宿から読み解く『奥の細道』
◆芭蕉はどんな旅をしたのか/金森敦子著/晶文社
騎士から下層民までの暮らし方が
◆ドイツ中世の日常生活/C・メクゼーバー、E・シュラウト著/刀水書房
血沸き肉躍る建国のいきさつが
◆イスラム・スペイン千一夜/小西章子著/中央公論社
問題提起が目をひく十四人の論
◆ぼくらの「侵略」戦争/宮崎哲弥著/洋泉社
数学の始まりを面白くひもといて
◆ギリシア数学のあけぼの/上垣渉著/日本評論社
『ドン・キホーテ』の読み方の変化を指摘して
◆セルバンテス/P・E・ラッセル著/教文館
視野の大きさから数々の事実が
◆日本経済の200年/西川俊作・尾高煌之助・斎藤修著/日本評論社
江戸後半期の農村の再考を迫る
◆猪・鉄砲・安藤昌益/いいだもも著/農山漁村文化協会
洞察力にうらづけられた叙述が
◆ユリウス・カエサル ルビコン以後 ローマ人の物語/塩野七生著/新潮社
最古の福音書を中心にイエスに迫る
◆イエスとは誰か/高尾利数著/日本放送出版協会
露戦争前後の日米の駆け引きを
◆満州の誕生/久保尚之著/丸善ライブラリー
『山びこ学校』の四十四人の軌跡
◆遠い「山びこ」/佐野眞一著/文春文庫
作品の魅力と凄味を指摘して
◆金瓶梅/日下翆著/中公新書
数学者たちの縁の地を旅する
◆アーベルとガロアの森/山下純一著/日本評論社
過去の暮らしが浮き彫りに
◆台所用具の近代史/古島敏雄著/有斐閣
代表的な女たちのゆくえを追って
◆<色好み>の系譜/今関敏子著/世界思想社
歴史を遡って鋭く巧みに解明
◆日本人はなぜ無宗教なのか/阿満利麿著/ちくま新書
評伝と作品解説の格好の手引書
◆英国の著名小説家十人/ヴァレリー・G・マイヤー著/開文社出版
リアリズムを貫いた仕事と素顔
◆土門拳――生涯とその時代――/阿部博行著/法政大学出版局
かつての勤務地の歴史をひもとく
◆アレキサンドリア、わが旅/内藤幸雄著/新潮社
不思議な人柄を浮き彫りにして
◆人間虚子/倉橋羊村著/新潮社
壮麗な文様の伝播を辿って
◆唐草文様/立田洋司著/講談社
異文化接触のおもしろさ
◆イスラーム治下のヨーロッパ/デュフルク著/藤原書店
医師と文人であった人々の素顔
◆鴎外と茂吉/加賀乙彦著/潮出版社
その宗教理解のための魅力的読み物
◆世界の歴史8 イスラーム世界の興隆/佐藤次高著/中央公論社
生命科学の魅力 柳澤桂子『二重らせんの私』について
市川崑について
窓をあけるという感じ
五月の丘の共産主義
すばらしい本を読んたときの気持ちは、また格別なものだ。体じゅうの細胞の一つ一つがふくらんで、いまにも弾み出そうとしている感じだ。そんなとき親しい友達に会ったら、こんなおもしろい本があるんだ、といってなかなか相手を放さないにちがいない。ただそういって話す相手がたった一人だけだったとしたら、弾み出そうとする細胞にとって多少の欲求不満を残すだろう。
「窓をあけるという感じ」からヒントを得てこの本のタイトルをつけることになった。あのエッセーでは窓を開くという言葉が中心になったが、この言葉をあれほど狭い意味でなくてももっと広く使ってもいいのではないかと思った。たとえば、読書によって知らないことを知るようになったということにしても、窓が開かれたと考えてもいいのではないか。いい本を読むことは窓を開くことだといえよう。
知らなかったことを知るようになった場合だけではない。不正確に知っていたことを正確に知るようになったこともそうであるし、もっと言えば、自分では知っていると思っていたことが実はちっとも知らなかったことがわかった場合だって、大きな窓を開いたわけだろう。いい読書は多かれ少なかれ窓を開くことになる。といって読書でさえあればどんな読書だって窓を開くというわけではない。
時間つぶしのための読書もあれば、純粋に楽しみのための読書もある。そういうもののなかに案外窓を開く効果もあるかもしれない。窓を開く効果は、難しい本に限られるものでもあるまい。ただ窓が開かれたときの、視野が広くなったときのこころよさ、さわやかな外気のもつこころよさ、そのこころよさのもつ充実感、それこそは良い読書が与えてくれる贈り物であろう。われわれはこの贈り物を大事にしたいと思う。
――「はしがき」より