はじめに
第I部 山崎豊子の小説作法
第1章 盗用問題の発端『花宴』
1 レマルク『凱旋門』からの盗用が指摘される
2 中河与一『天の夕顔』に酷似した部分が四ヶ所発見される
3 文芸家協会から自発的に退会
4 全体の発想は芹沢光治良『巴里夫人』からか
第2章 『白い巨塔』の制作方法
1 「影武者」は毎日新聞記者・大熊房太郎
2 大宅壮一システム――集団化による共同制作
第3章 『不毛地帯』と『シベリヤの歌』をめぐって
1 いまい・げんじに突然かかってきた電話
2 「歴史的事実」の中に「主観」が入り込む
3 『シベリヤの歌』と『不毛地帯』の酷似箇所
4 記録文学(ノンフィクション)と虚構の世界(小説)
5 「盗用作家」の文学観の本質
第4章 ネタ本があった? 『二つの祖国』
1 島村喬『二重国籍者』がネタ本か
2 『二重国籍者』はどう「参考」にされたか
3 カール・ヨネダの抗議
第5章 『大地の子』と中国残留孤児――フィクションとノンフィクションの狭間を考える 1 『チャーズ』と『大地の子』の類似性
2 東京地裁の判決
3 「中国」と「日本」と「戦争孤児」と
4 「中国残留孤児」を生んだ戦争への視点
第6章 『沈まぬ太陽』と事実の間
1 「事実を取材して小説的に再構築した人間ドラマ」への違和感
2 野田正彰『喪の途上にて』からの盗用問題
3 ノンフィクションとしての「御巣鷹山篇」の問題性
4 山崎流小説作法の「盗用疑惑」を生む五ヶ条
第II部 朝日新聞社と和解した『不毛地帯』裁判
第1章 「朝日」報道と山崎豊子の提訴
1 朝日新聞社が被告になるまでの経緯
2 朝日新聞記者たちの動き
3 朝日新聞記事全文
第2章 裁判はどう展開されたか
1 山崎豊子の請求と朝日新聞社の答弁書
2 裁判における論戦
第3章 不可解な「和解」とその後
1 「和解」後の山崎豊子の行動
2 知的所有権保護における「盗用」と「著作権侵害」の解釈
第III部 山崎豊子は「戦争」をどのように捉えたのか
第1章 シベリア抑留と瀬島龍三の軌跡
1 戦後の始まりが「山崎豊子」の始まりだった
2 戦後になっても続いた大きな空白
3 壹岐正という主人公のモデルに迫る
4 瀬島龍三の記録からみる日米開戦までの経緯
5 戦後も謎を残した「クーリエ」での行動
6 関東軍とソ連極東軍との「密約説」
第2章 戦中派が『不毛地帯』を讃美する背景
1 スターリンの極秘指令
2 東京裁判と草場中将の自殺
3 瀬島龍三の供述はどのようなものだったか
4 シベリア民主運動の実際
5 なぜモデルが瀬島龍三なのか
6 壹岐正と瀬島龍三の間に何が読めるか
7 「戦争三部作」の根底に在るもの
第3章 『二つの祖国』と東京裁判をめぐって
1 『二つの祖国』で描かれた東京裁判の特徴
2 ニュルンベルク裁判と東京裁判
3 「共同謀議」への疑問
4 罪状認否での被告たちの描写
5 日本の中国侵略はどう描かれたか
6 『二つの祖国』にも登場する瀬島龍三
第4章 国家主義礼讃の物語が汲み出される
1 日米開戦の描かれ方
2 日系二世に日本精神を語らせる
3 「敗戦国日本の正義」の主張
4 微妙な心理の刷り込み――天皇の戦争責任の回避
5 キーナン主席検事の最終論告をめぐって
6 日系二世モニター天羽賢治の役割
7 東京裁判が提起する課題 306
第IV部 山崎豊子を生む戦後日本の土壌
第1章 山崎豊子は戦後社会のどこに「人間ドラマ」をみたか
1 日本が選択した分離講和の代償
2 『不毛地帯』に描かれた戦後
3 戦後賠償ビジネスのカラクリ
4 バッジ・システムと戦闘機商戦
5 軍の指揮運用と企業経営
6 戦争の遺産が生んだ「日本モデル」を描く『沈まぬ太陽』
7 戦中世代の「男の美学」
第2章 マスコミによって山崎豊子の温床が作られるという構造
1 文芸家協会の対応――山崎自主退会の後で
2 お礼参りされた文芸家協会
3 かたよった描き方から出た被害者たち
4 主人公のモデルとされる人物の意見
5 週刊誌というジャーナリズム
6 サラリーマンの嗜好性と文豪の虚構性
7 大宅壮一――知的労働の集団化
8 現代の文芸出版の傾向
第3章 山崎豊子という国民作家の作られ方とその役割
1 作品が映画化されテレビドラマにも登場する
2 「二つの祖国」という概念はない
3 日米経済摩擦のなかで
4 山崎豊子はなぜ「祖国」にこだわるのか
5 NHKドラマ『大地の子』が放映されてからの波紋
6 「日本人」を意識させる「小日本鬼子」と「ジャップ」
7 天羽賢治のモデル伊丹明の真実
8 極東裁判終了後の伊丹明
9 「歴史」の語られ方
10 「歴史」を描く三つの領域
11 司法への懐疑
あとがき