纐纈厚
『周辺事態法』

書評より

●[インパクション119号 2000/6月]

「……本書の中で政府周辺の団体が出した有事法制に関する意見が詳細に紹介されている。その中で、防衛庁の外郭団体である平和・安全保障研究所が作成した『有事法制についての提言』を重視し、同提言の『これからの有事はわが国に対する武力攻撃の発生だけでなく、周辺地域における不安定の発生など、武力攻撃以前の危機の段階からの対策を含めた措置を考える必要がある』、『首相が国会の同意を得て非常事態を宣言できることの規定』を主張していることをポイントとして指摘している。この予想の的確さは纐纈氏の永年の研究の蓄積を感じさせるところである。まさに、森内閣がねらうのはこうした有事法制だろうし、それこそ周辺事態法の限界を補うものであろう。『有事法制が積み重ねられていくことは、諸外国からも不信と猜疑心とを招くだけであり、信頼醸成の機会をさらに失っていくことになろう。そのような愚行をあえて犯すことは、日本の本来の意味における国益にも合致しない』との主張を、私たちはともにしていく必要があろう。(木元茂夫)」

●[図書新聞 2000/5月20日号]

「本格的な有事法づくりに向う動きと『地方分権一括法』によって、抵抗の根拠(中央に抗する自治権)を奪ってしまう動き、さらに戦争指揮体制づくりをめざす行政の集権化(高度行政国家化)の動き。こうした動きを具体的に相互関連づけて分析する作業は、まだ十分に果たされていない。この作業がキチンと進められている点が、本書の第一のメリットであると思う。著者は、かつての総力戦体制、総動員体制の研究者である。だから、現在の、体制再編・九九年体制づくりの批判的分析においても、常にかつての総動員体制づくりがどうであったか、今、それが、新しい時代条件のなかで、どのように『再生』しつつあるのかという歴史的視点がふまえられている。これが本書の第二のメリットであるといえよう。(天野恵一/反天皇制運動連絡会)」


●[週刊金曜日 2000/4月14日号・自薦]

「この国は本物の軍事国家を目ざして暴走し始めた。『懸案処理国会』と言われた先の国会で、周辺事態法から国旗・国歌法に至る一連の法律群が次々に成立し、軍事国家の体裁が整えられた。戦後の保守政権が果たし得なかった懸案が、自自公路線の下で一気呵成に文字どおり『処理』されたのである。……私はこれら法律群によって構築されようとする新たな政治体制を、『五五年体制』に替わる『九九年体制』と読んでおきたい。本書は、そうした新体制の分析とこれへの意義申し立て書である。(纐纈厚/山口大学人文学部教員)」