トップページ 既刊 図書目録 著者一覧 書籍購入 会社案内 書評 リンク
朝鮮農村の〈植民地近代〉経験
松本 武祝著(マツモト タケノリ)
The Experiences of "Colonial Modernity" in Korean Villages
Written by Takenori Matsumoto
植民地期と解放後の朝鮮の「近代」としての連続性に着目し、ヘゲモニー、規律権力あるいはジェンダーといった分析概念から、植民地下朝鮮人の日常生活レベルでの権力作用の分析を試みる。日韓の最新の研究蓄積をふまえ、民族主義という評価基準を超えた歴史像を再構成する試み。
7月22日 |
A5判★322頁★3600円+税
ISBN4-7845-0286-6
序章 研究史の整理と課題の提示
はじめに
i 同時代性と段階性
ii 規律権力・大衆文化・メディアと資本主義
iii 「植民地近代」に関する研究史
iv 朝鮮における「植民地近代」
v 資本主義と共同体
vi グレー・ゾーンと「農村エリート」
vii 「民族主義」言説の形成
おわりに
第1章 植民地期朝鮮農村における衛生・医療事業の展開
はじめに
1 農村部における医療機関の分布情況
(1)病院
(2)医師
(3)医生
2 農村部における医療機関の利用情況
(1)病院の利用情況
(2)農村部における医療機関の利用情況
3 農村部における防疫事業の特徴
4 衛生に関する「啓蒙」事業の展開
(1)地方行政機関による「啓蒙」事業
(2)民間団体による「啓蒙」事業
5 衛生事業を契機とした農村の組織化
おわりに
第2章 植民地期朝鮮における朝鮮人下級職員の意識構造
はじめに
1 「朝鮮人職員」の社会的特性
(1)「行政論壇」投稿者・推薦投票者の属性
(2)「朝鮮人職員」の経歴
(3)「朝鮮人職員」の出身階層
(4)「朝鮮人職員」の履歴・出身階層に関する事例分析
(5)「有志」の階層性について
2 「行政論壇」投稿論文の分析
(1)自己啓発と啓蒙
(2)制度=物的動機づけに対する注目
(3)社会的不公正への注視
まとめにかえて
第3章 植民地下の朝鮮人はいかに統治されたか
日本「帝国」の意図せざる統合原理
はじめに
1 実力養成権力論なき主体性論
2 構造改革論主体なき「近代化」論
まとめにかえて
第4章 戦時期朝鮮における地方職員の対日協力
はじめに
1 地主小作関係への介入
2 時間の管理を通じた農民生活への介入
(1)朝鮮在来農法に対する視点
(2)農事暦を通じた農民生活への介入
3 戦時動員の強化と邑面職員の対応
(1) 地方職員のサボタージュ
(2) 制度の改善に関する提案
(3)制度の強化に関する提案
おわりに
|
第5章 戦時体制下の朝鮮農村
「農村再編成」の文脈
はじめに
1 「内省主義」の系譜
2 農村振興運動の展開とその限界
(1)政策的枠組み
(2)振興運動の実践過程とその限界
3 総督府の政策転換と朝鮮人の「対日協力」
(1)戦時体制下での政策転換
(2)イデーローグの「対日協力」
(3)地方職員の「対日協力」
4 戦時動員政策と村落
(1)米穀供出における村落の組織化
(2)村落「中堅人物」の役割
おわりに
第6章 水利事業をめぐる合意形成過程の特質
植民地朝鮮・富平水利組合の事例分析
はじめに
1 富平水利組合の概要
2 富平水利組合における意志決定過程
(1)組合費減免に関して
(2)組合費賦課の公正性に関して
(3)総督府財政による支援に関して
富平水利組合の水路管理・配水方法
(1)水路契
(2)水路監視人
おわりに
第7章 植民地朝鮮における農業用水開発と水利秩序の改編
万頃江流域を対象として
はじめに
1 初期における水利組合の設立過程
(1)万頃江右岸域の地理的条件と在来水利組織の分布
(2)初期の水利組合事業
(3)初期段階における組合間の関係
2 新規水源の開発
(1)益沃水利組合の設立過程
(2)益沃臨益水組間の分水問題
3 四水利組合の合併過程 行政の介入
(1) 水需給の推移
(2)全北水利組合の成立過程
(3)鳳東・参礼地区の編入過程
(4)全北水利組合成立後の水利情況
おわりに
文献一覧
あとがき
人名索引
松本武祝(まつもと たけのり)
1960年福島県いわき市生まれ。
1991年、神奈川大学経済学部教員
2000年、東京大学大学院農学生命科学科教員
主著『植民地期朝鮮の水利組合事業』未来社、1991年
『植民地権力と朝鮮農民』社会評論社、1998年
|
書評
●[植民地支配で歪められた近代化――『朝鮮農村の〈植民地近代〉経験』を読んで8/28今週の本棚 市民メディア・インターネット新聞JANJAN]
どの国の植民地当局も現地人協力者を必要とする。とくに末端では欠かせない。朝鮮人の現地協力者の心情は複雑であろう。「親日分子」、「対日協力者」とくくるのは乱暴すぎる。もちろん活字になったものは当局の目を警戒して、本音を顕しているはずがない。書かれてないものを読む努力をしなければなるまい。
彼らの多くは出世を望みながら、住民のための行政も心がけていた。日本人との待遇の差、差別に怒り、解放を望んでいた。それが大部分だと思う。植民地統治下の朝鮮は、農村も含め、歪められた形を取りながら近代化しつつあった、とみるべきだろう。現在の韓国の発展は「近代化」と連続している。
[評者 冨山正美]