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東アジア・交錯するナショナリズム
石坂浩一・塩沢英一・和仁廉夫・小倉利丸
Eastern Asia, amalgam of Nationalism.
Koichi Ishizaka, Eiichi Shiozawa, Yukio Wani, Toshimaru Ogura

中国・韓国で「反日」の声が高まり、日本でも対抗的な右派言説が強まっている。しかし、そこにあらわれているのは、古い図式ではとらえきれない、グローバル化の時代の「新しいナショナリズム」現象なのだ。変容する東アジア社会で、多様化・流動化する民衆意識をふまえて論じる。

9月8日

46判★240頁★1800円+税
ISBN4-7845-1317-5

1―韓国の「民族主義」を考える ●石坂浩一(立教大学教員)
   はじめに―二者択一の発想から脱するために
    韓国人=民族主義というレッテル
    変わりゆく韓国社会
   イ・スンマンの「反日」からパク・チョンヒの「民族主義」へ
    反共運動の一環としての「反日」
    抑制された日本批判
    民主化運動の中の「民族」
   国際協調と統制された民族主義
    「太陽政策」が意味したもの
    国際協調と平和繁栄政策
    ノ・ムヒョンの政策を妨害する保守派
  民族についての論戦
    国家主義的民族主義への批判
    抵抗的民族主義論
    北朝鮮の民族主義
  むすび

2―中国ナショナリズムの諸相 ●塩沢英一(共同通信前北京支局)
   はじめに―日中の相互作用
   日中「ナショナリズム」の土壌
    「反日」がシンボルに
    「反日」マグマの蓄積
    「謝罪」の真相
    あいまい路線の破綻
    第二の転換
    歴史へのこだわり
    被害者意識
    政治体制の欠陥
   ナショナリズムの担い手たち
    「反日」の教祖
    若者が人材源
    「市民社会」の台頭
    影の主役はIT
   中国ナショナリズムの歴史的変遷
    江沢民が輝いた日―二○○一年七月一三日
    抑制された「反日」―七○年代まで
    国内へ向かったナショナリズム―八○年代
    ナショナリズムの強化―九○年代
    反ナショナリズムだった新思考
    思想改造に失敗
    親民路線のジレンマ
    反政府への不安
    指導部内でも対立
   おわりに―岐路に立つ日中

3―ネット社会が与えた回帰後香港の新しい使命 ●和仁廉夫(ジャーナリスト)
   暴徒化しなかった香港の反日デモ
    暴徒化を防いだ多元社会
    香港の反日和平デモ
   香港民衆運動史に見る抵抗の伝統化
    植民地香港の反英闘争
    八年抗戦と三年八カ月
    香港コミュニティの形成
    「六四旧世代」と「七一新世代」
   香港の役割が変わった
    ネット社会と香港
    三つの対日譴責決議

4―「台湾人意識」の虚像と実像 ●和仁廉夫
   はじめに―「台湾人意識」とは?
   李登輝訪日と宋楚瑜訪米
    二度の李登輝訪日    
    隠密だった宋楚瑜訪米
   陳総統政策転換の舞台裏 
    「我々は皆、炎黄の子孫」
    台湾化路線のゆきづまり
    硬軟交えた中国のシグナル
   陳政権二期八年の中間総括
    陳水扁政権八年の「起転承結」
    全民政府、新中間路線
    台湾化路線、戦う内閣
    無理を重ねた総統選挙
    政権党に噴出した数々の疑惑
    政策転換を促した米国の意向
   台湾人意識の虚像と実像
    隠れていた中華意識
    世論調査に見る台湾人意識
    「日台同盟」の虚構
  まとめ―李登輝の運命
    李登輝の立場の変化
    棄てられる李登輝




5―戦後ナショナリズムの終焉と新たなナショナリズムの台頭 ●小倉利丸(富山大学教員)
  はじめに―生成途上の新しいナショナリズム
  ナショナリズムをどのように理解したらよいか
    ナショナリズムとは何か?
    知識人のナショナリズムと民衆のナショナリズム
    ナショナリズムの基層をなすもの
    残された「日本人」アイデンティティー
    「実在」するナショナリズム
  転位する日本のナショナリズム―戦後ナショナリズムの終焉
    親米ナショナリズムからの出発
    世代論としてのナショナリズム論の限界
    移動する戦後ナショナリズムの軸
    変化する「戦争」の中で
  ポスト戦後ナショナリズム=反米ナショナリズムの文脈
    サブカルチャーの中に兆すもの
    『凶気の桜』とヒップホップ
  矛盾をはらむ反米ナショナリズム
    反米とアメリカ文化の共存
    どこで歯止めをかけるのか?
  おわりに

資料

 [韓国]盧武鉉韓国大統領の三・一記念演説
  [韓国]愛媛教科書訴訟、韓国国会議員と韓国原告らの声明書
  [韓国]韓日友好を破壊する日本文部科学省の「つくる会」教科書検定合格を強く糾弾する!
  [中国]中国天鵞絨行動のよびかけ
  [中国]日本右翼に抗議する上海地区抗議活動詳細説明書
  [中国]抗日救国連合陣線の愛国同胞に告げる書
  [香港]一切の歴史は改竄できない(司徒華)
  [香港]日本の歴史教科書改竄に反対する決議(香港立法会決議)



石坂浩一(いしざか・こういち) 1958年生まれ。韓国社会論、日韓・日朝関係史専攻。立教大学経済学部助教授。 著書に、『トーキング コリアンシネマ』(凱風社)、『韓国と出合う本――暮らし、社会、歴史を知るブックガイド――』(岩波ブックレット)、編書に『日韓「異文化」交流ウォッチング』(社会評論社)、『現代韓国を知るための55章』(明石書店)など多数。

塩沢英一(しおざわ・えいいち) 1963年生まれ。共同通信社外信部記者。 学生時代にアジア、中南米など約40カ国を歩き、87年に入社後、札幌支社、社会部などを経て94年に香港中文大学留学。98年9月から2000年1月までジャカルタ駐在記者。同年12月から04年4月まで北京に駐在、主に政治・外交・社会を担当。著者に『インドネシア烈々』(社会評論社)、共著に『香港軍票と戦後補償』(明石書店)などがある。 

和仁廉夫(わに・ゆきお) 1956年生まれ。ジャーナリスト。 県立高校、予備校での教壇を経て1990年代より香港、澳門、台湾、在日中国人など中華世界外周部の人々と交わり、歴史関係、現状分析を手がけてきた。著書に、『香港――旅行ガイドにないアジアを歩く――』(編著、梨の木舎)、『歴史教科書とナショナリズム』(社会評論社)、現在は中国の「美女経済」を追跡中。

小倉利丸(おぐら・としまる) 1951年生まれ。富山大学経済学部で現代資本主義論などを教える。ピープルズ・プラン研究所共同代表。 著書に『グローバル監視警察国家への抵抗』(編著、樹花舎)、『路上に自由を』(編著、インパクト出版会)、『カルチャークラッシュ』(社会評論社)、『労働、消費、社会運動』(編著、社会評論社)などがある。

書評


●[沖縄タイムズ2006]このようなナショナリズムの再燃に対して冷静な人々でも、その現象が外交関係や経済活動へ与える影響、「東アジア共同体」の形成には関心を寄せている。各国のナショナリズムに目を向け、その「復活」現象の性格や特徴を歴史的に解明する上で、進行中の実態を多角的に考察するアプローチが欠如している中、本書はそれを埋めようとする意欲的な一冊である。
●[Asia Wave 2006年4月号]中国でのインターネットの隆盛について、「インターネットが、日本など民主的な社会以上に過信される傾向があるのも中国の特徴だ。日本では新聞やテレビの報道の方がネットの書き込みなどより正確と受け止められるが、中国では逆だ。当局の規制が届きにくいネットにこそ真実が露出していると思いこむ。この結果、誤ったとんでもない情報が口コミ同様にネット上で独り歩きする。これがナショナリズムを暴走させる結果を生んでいる」と指摘している。世界市民を形成するかに見えるインターネットが愛国精神の熱狂的発揚に大きな役割を果たしているという逆説に唸ってしまう。

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●開設 1998年12月31日
 ●最終更新日 2005年 9月28日