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思想 【人と歴史】
革命家・トロツキーをメキシコで暗殺したラモン・メルカデル。
彼の出発点は、ファシスト・フランコと熾烈な内戦を繰り広げたスペイン内戦にあった。
逮捕された暗殺者を奪還しようとはかるソ連の諜報機関と、その動きを暗号解読で察知したアメリカの諜報機関。
三〇年代世界史の転換を、米ソの情報戦を通して読み解くドキュメンタリー。
【目次】
プロローグ
1●一〇月革命を支援したアメリカ資本とドイツ軍
日ロ戦争もアメリカ資本の援助で
辛亥革命も、メキシコ革命もアメリカ資本が支援
目的のためなら相手を選ばぬ独占資本
不可解な資金の出所
隠れ蓑として使われた国際赤十字
2●トロツキーの暗殺者たちはスペイン内戦育ち
モロッコ兵と鉄兜
絶対王政、カトリック支配からの脱皮
画期的な新憲法
教会の破壊、要人の暗殺
「スペイン全土快晴なり」
「ナショナリスト+ファシスト」対「リベラル+コミュニスト+アナーキスト」
「赤の群れ」対「キリスト教文明」
スペイン内戦を腕試しにも利用した外国勢
お互いさまの残虐行為
「わが子よ、死んでくれ」とした守備隊長
死闘だけではすまなかったテルエルの戦い
内戦に見るトロツキーの革命観
内戦が育てたトロツキー暗殺者たち
そこにソビエト神話の崩壊を目撃したジョージ・オーウェル
3● 追うスターリン、追われるトロツキー
トロツキーの「野望」
時には相容れなかったトロツキーとレーニン
レーニンもスターリンも認めたトロツキーの手腕
確立されたスターリンの覇権
トロツキーとスターリンの確執
ロシア国内から追放されたトロツキー
次々と家族を奪われたトロツキー
トロツキーの身辺に潜入したNKVD工作員
凄腕工作員は米国で文化人類学の研究者に
「ビザなしの惑星」暮らしとなったトロツキー
東清鉄道の移譲ではスターリンに賛意
日本帝国主義への警告
4●メキシコに逃れたトロツキー
トロツキーを受け入れたメキシコの事情
追うスターリン
動員されたメキシコ共産党
外濠の埋め立てには身辺の女性を利用
どじを踏んだ第一次実行部隊
はからずも暗殺を任された「ジャクソン」
運命の一九四〇年八月二〇日(火曜日)
解放された人類の未来を信じてれた稀代の革命家
5 ●VENONA PROJECT (ソ連外交暗号電報解読作業)
ゾルゲ情報で極東ソ連軍をモスクワ攻防戦に投入
国際間の信義より目先の国益
「噂」の存在確認がきっかけとなった VENONA PROJECT
家庭科の教師だった女性が解明の端緒
工作の連絡に使われたソ連外交電報
マンハッタン計画にソ連の眼が
遅々として進まぬ暗号解読
暗号解読の糸口は元ソ連大物工作員から
VENONA PROJECT の夜明け
VENONA情報に現れた暗号名
明かされた対ソ協力、米高官
大統領も知らなかった VENONA PROJECT
6●VENONA PROJECTが明かしたトロツキー暗殺者奪還計画
取調室での暗殺者
「カティンの森」虐殺事件の真相を掴む
綿密に仕組まれた奪還計画
奪還計画を食い物にしていた現地襲撃隊長
暗殺者の更なる奪還計画
メキシコに繰り出した暗殺者の母
在サンフランシスコKGBが内部告発
7● 弟が語る暗殺者、兄ラモン・メルカデル像
スターリンもスターリンなら、トロツキーもトロツキー
ラモンの弟、ルイスの回想
弟に語ったトロツキー暗殺事件の内幕
知られていた暗殺者の素性
暗殺者の奪還を図っていたNKVD
厚遇されたラモン、無視されたゾルゲ
不可解なラモンの体調不良
KGBに消された?ラモン
エイチンゴンがめかしたラモン毒殺疑惑
8● トロツキーの動向と暗殺の背後を追っていたFBI
米国に潜入していた?トロツキー
トロツキー、ディース委員会での証言に同意
遺骸ですら米国は入国拒否
襲撃の黒幕を告発する
モスクワより先に暗殺を知ったFBI
詳細にわたるFBIの部内調査メモ
暗殺者が利用した「妻」はニューヨーク市の公務員
FBIの関心は米国共産党とソ連の諜報活動
フーバーFBI長官が尋問の指示
孤立していた「妻」、シルビア・アゲロフ
幻に終わった「ジャクソン」奪還計画
おわりに
篠崎務
一九三四年東京生まれ。
翻訳家。日露歴史研究センター幹事、ジョージ・オーウェル読書会会員。
訳書に白井久也編『米国公文書ゾルゲ事件資料集』(社会評論社)、パトリック・ハミルトン『二つの脳を持つ男』(共訳、小学館)、大石健太郎監修『ジョージ・オーウェル評論集』(彩美社)、その他アメリカ大リーグ関連書など。
[図書新聞 2010/1/1]
不要になった工作員は、本部の諜報機関からつねに捨て去られる運命にあることは、「世紀の国際スパイ」といわれたソ連軍事諜報員、リヒアルト・ゾルゲの例が、示している。トロツキー暗殺犯ラモン・メルカデルも、そうではなかったのか?
真実を覆い隠す「歴史の闇」は、想像以上に深いことを、痛感させる著作である。
日露歴史研究センター代表・白井久也
[朝日新聞夕刊文化欄 2009/12/10]
ソ連共産党の権力闘争でスターリンに敗れたトロツキーが、亡命先のメキシコで暗殺されたのは1940年。暗殺の実行犯を獄中から奪還するようにスターリンに命じられ、実行しようとした秘密部隊の様子を追った研究がまとまり、『トロツキー暗殺と米ソ情報戦』(社会評論社)として出版された。







