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思想 【哲学・社会学・思想史】

一九三〇年代のアジア社会論

一九三〇年代のアジア社会論

「東亜協同体」論を中心とする言説空間の諸相

石井知章(編著) / 小林英夫(編著) / 米谷匡史(編著)

価格: 2800円+税
発行日: 2010年2月25日
版型: A5判並製
ページ数: 400頁
ISBNコード: ISBN978-4-7845-0590-6
Cコード: C0030
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詳細内容

一九三〇年代のアジア社会論。それは帝国の総力戦が近代の知に衝撃を与え、戦時変革を試みる「集団的知性」がトランスナショナルな思想的、社会政策的な運動を展開した一大エポックであった。10人の研究者による論集。「東アジア共同体」を歴史的に問う!

【目次】

[序論]
「アジア社会論」の系譜における一九三〇年代(石井知章・小林英夫・米谷匡史)
 1 一九二〇年代のアジア社会論
 2 一九三〇年代のアジア社会論
 3 一九四〇年代におけるアジア社会論の再編
 4 戦後におけるアジア社会論
 5 本書の課題と構成

[第1章]
尾崎秀実の「東亜協同体」批判──日中戦争期の「社会」問題(米谷匡史)
 はじめに
 1 西安事件と「中国統一化」論争
 2 日中開戦と社会革命の徴候
 3 「東亜協同体」批判
 4 戦時下の「社会」問題
 5 〈帝国の社会科学〉としての「東亜協同体」論
 6 抗日戦争と「農業革命」
 おわりに──「東亜新秩序社会」のヴィジョン

[第2章]
蝋山政道と戦時変革の思想(平野敬和)
 はじめに
 1 一九二〇年代の蝋山政道
 2 デモクラシーの危機と「地域主義」
 3 蝋山政道の「東亜協同体」論
 おわりに

[第3章]
二十世紀社会学の課題と「東亜」──新明正道にとっての総力戦(道場親信)
 はじめに
 1 時評と社会科学──三〇─四〇年代年代新明正道の課題
 2 国民社会の再組織
 3 民族自決主義の超克と「超国民的組織」
 4 課題の継続─新明社会学の「戦後」


[第4章]
加田哲二の「東亜協同体」論(石井知章)
 はじめに
 1 加田にとって「東亜協同体」とは何か?
 2 「東亜協同体」論への序説
 3 加田の「東亜協同体」の基本原理とは?
 4 西欧資本主義の植民地支配と「東亜協同体」論
 5 「東亜協同体」論とナショナリズム
 おわりに

[第5章]
複製装置としての「東亜協同体」論──三木清と船山信一(大澤聡)
 はじめに
 1 分析視座の設定──二元的枠組と〈固有名〉の呪縛
 2 揺動するテクスト──船山信一の自己分裂
 3 同期化と複数化──「東亜協同体」言説の軌道修正
 4 転移する〈希望〉──複製装置という機能的存在
 5 再接続の失敗──未完の《戦時変革》
 おわりに


[第6章]
平野義太郎とマルクス社会科学のアジア社会論──「アジア的」と「共同体」の狭間で(盛田良治)
 はじめに
 1 契機としての中国国民革命・日本資本主義論争
 2 「専制と停滞」のアジア社会論──転向以前の平野義太郎
 3 「共同体」論としてのアジア社会論──転向後・戦時期の平野義太郎
 おわりに

[第7章]
満鉄調査部の思想──大上末廣と宮崎正義(小林英夫)
 はじめに
 1 大上末廣・宮崎正義、その人となり
 2 宮崎正義と大上末廣の思想形成と展開
 3 宮崎正義と大上末廣の思想展開
 3 戦後への展望
 おわりに

[第8章]
佐藤大四郎の協同組合思想と──「満洲」における合作社運動(福井紳一)
 はじめに
 1 佐藤大四郎の人と思想
 2 佐藤大四郎の思想形成
 3 佐藤大四郎の協同組合思想
 4 合作社事件

[第9章]
転向から考える植民地・近代・アジア──解放前後における印貞植の実践を中心に(洪宗郁)
 はじめに
 1 一九三〇年代半ばにおける朝鮮論
 2 日中戦争と転向
 3 解放前後における連続と断絶
 おわりに

[第10章]
海軍省綜合研究会と板垣與一(辛島理人)
 はじめに
 1 海軍省調査課におけるブレーントラストの形成
 2 ブレーントラストの構成と性格
 3 板垣與一の蘭印訪問
 4 開戦前後の綜合研究会
 おわりに

あとがき 石井知章・小林英夫・米谷匡史

著者略歴

石井知章
1960年生まれ。明治大学商学部准教授。
早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。博士(政治学)。(社)共同通信社記者、ILO(国際労働機関)職員を経て現職。
著書:『K・A・ウィットフォーゲルの東洋的社会論』社会評論社、2008年。
『中国社会主義国家と労働組合-中国型協商体制の形成過程』御茶の水書房、2007年。共著:鈴木宏昌・連合総研編『開かれたアジアの社会的対話』日本評論社、2002年など。

小林英夫
1943年生まれ。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。
東京都立大学大学院博士課程中退。博士(文学)。
著書:『「大東亜共栄圏」の形成と崩壊』御茶の水書房、1975年。『満鉄調査部の軌跡』藤原書店、2006年。『日中戦争』講談社新書、2007年など。

米谷匡史
1967年生まれ。東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授。
東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。
著書:『アジア/日本』岩波書店、2006年。編著:『尾崎秀実時評集--日中戦争期の東アジア』平凡社・東洋文庫、2004年。『谷川雁セレクション』Ⅰ・Ⅱ(共編)日本経済評論社、2009年など。

書評

[週刊エコノミスト 2010/5/25]

総力戦へと向かう1930年代の日本は、アジアをどのようにとらえていたのか。本音は植民地であり、「東亜共同体」はそれを覆い隠すイデオロギーだったのか。
9人の歴史、思想研究者たちが「尾崎秀実の『東亜共同体』批判」「マルクス社会科学のアジア社会論」「満鉄調査部の思想」などをテーマに寄稿。

[出版ニュース 2010/4/1]

本書を読み進める中で強い驚きを覚えたのは、「アジア社会論」の展開の過程に多くの(偽装転向)マルクス主義者たちが関わっていたことである。尾崎や中西功、平野義太郎らはもちろんだが、これまでほとんど無名であった、裏返して言えば本書によってほぼ初めて考察の遡上に載せられたといってよい満鉄調査部周辺の大上末廣、佐藤大四郎らもまた総力戦の思想としての「アジア社会論」に社会主義や民族解放を目ざす変革のモティーフを忍び込ませようとした人間たちだった。

高橋順一

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