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カルチャー 【アート・コミック・アニメ】

天皇アート論

天皇アート論

その美、“天”に通ず

アライ=ヒロユキ

価格: 2800円+税
発行日: 2014年8月15日
版型: A5判並製
ページ数: 332頁
ISBNコード: ISBN978-4-7845-1912-5
Cコード: C0030

詳細内容

戦後日本の美術家たちによる、天皇をモチーフにした表現の数々。
芸術を支える制度と真実を求める政治的表現の衝突。日本社会における、一木一草に宿るという天皇制。その中にあって、制度を凝視し、議論を喚起する「天皇アート」の作品たち。それは、この時代における人間再生のための灯火でもある。

【目次】

 序章  天皇制という分水嶺
社会の名で、いま日本で起きていること  
忌避すべき政治性の真髄、天皇表現  


第1章  一九四五以前の天皇アートの変遷と社会背景
歴代の帝肖像画/幕末諷刺画/キヨッソーネ/明治期錦絵(月岡芳年)/ 明治神宮聖徳記念絵画館&神宮徴古館/本多錦吉郎/宮武外骨

禁忌とリアリズムのあいだで揺れる表現 
天子と乞食は同じ。江戸期のラディカリズム  
輸入概念の天皇は、和風にそぐわず
伝統という虚偽。光格天皇が創りあげたフィクション
人間性の消去。天皇の神格化に必要なもの
天皇制の矛盾に悩んだ森鴎外の良心
朝鮮侵略のポップイコン! 錦絵の神功皇后
プロパガンダと乖離する芸術の自律性
共和制移行の明記。私擬憲法で検討された日本共和国
近代の不敬表現は諷刺画から
宮武外骨、明治天皇と帝国憲法を笑い飛ばす


第2章  敗戦直後に開花したポリティカルアート
池田龍雄/桂川寛

人間宣言を告発する、超越者の視点
生き残り策の模索。昭和天皇の人間宣言の裏
天皇批判の急先鋒、カストリ雑誌『真相』
大衆表現の批評性と共和主義の提起
大衆運動が求める芸術メディア
黒い漫画と白い漫画
化け物の系譜が告発する天皇崇拝
河原温はなぜ西暦年を刻み続けるのか
桂川寛が描いた、もう一つの天皇表現
〝社会的空間〟が持つ制度への射程



第3章  戦争体験への熟考から生まれたもの
山下菊二/丸木位里・俊

従軍経験から生み出された、山下菊二の呵責ない批判
消し去られた声を召還する〈天皇制シリーズ〉
シュルレアリスムと闘争の現場を描くことの限界
ルポルタージュ絵画の次のステップへ。《あけぼの村物語》
一木一草に宿る天皇制を描き起こす
山下菊二が凝視したもの、凝視できなかったもの
「怨」の旗のもと、肯定された民族
大衆とともに進化し続けた絵画《原爆の図》



第4章  見えない制度をめぐる表現
高松次郎/今泉省彦/赤瀬川原平/貝原浩/向井孝/内海信彦/新潟現代美術家集団GUN(前山忠・堀川紀夫)/小池一誠(幻触)/工藤哲巳

高松次郎が不在性に込めた、永久革命
今泉省彦が構想した、処刑不可能のギロチン
赤瀬川原平に受け継がれた、宮武外骨の反逆精神
日米安保に突きつけられた、不敬でエロスな絵ビラ
昭和天皇のもう一つの「公」的イメージ、貝原浩・向井孝・内海信彦
前山忠と堀川紀夫~自己否定論から出発する天皇制批判
新潟現代美術家集団GUNは、なぜ政治性を強めたのか
幻触の小池一誠が打ち壊す「さざれ石」
工藤哲巳が構造化した天皇制のリアル
神話考察と文化人類学というアプローチに潜む陥穽
シニカルから自己肯定へ。〈天皇制シリーズ〉に見る、工藤哲巳の変遷


第5章  天皇という自画像は何を映すのか
大浦信行/古賀忠昭/大江健三郎/三島由紀夫/中上健次

《遠近を抱えて》の弾圧事件顛末(第一次大浦事件)
《遠近を抱えて》解題1:不完全体の昭和天皇の意味
《遠近を抱えて》解題2:フェティシズムと昭和天皇
古賀忠昭の詩集『土の天皇』の限界と可能性
大江健三郎と三島由紀夫。天皇小説の差異と共通点
縄文と天皇制の往還から生まれるビジョン
映画『日本心中』~汎アジアのための神話再考
中上健次。路地から始まる、天皇の無化



第6章  ポスト昭和=天皇をめぐって
X─DAYの内外報道/洪成潭/ロナルド・マヌラン/イスワント・ハルトノ/反天皇制全国個人共闘〈秋の嵐〉/荒井真一/金城実

X─DAY。天皇タブーの再来と少女たちの感傷
共和制議論の再燃とそこに足りないもの
ヨーロッパ紙の辛辣な批判。内外の天皇報道の落差
洪成潭の靖国シリーズ。直視すべきは負の歴史
二人のインドネシア作家が見た、天皇制と靖国~ロナルド・マヌラン、イスワント・ハルトノ
アクティヴィスト集団・秋の嵐の武器。それは笑い
荒井真一~その批判は泥臭い肉体プラス笑い
金城実~沖縄でこそ可能な彫刻表現と天皇制批判

第7章  アイデンティティの模索と再考
守屋多々志/富山妙子/岡本信治郎/中村政人/中ハシ克シゲ/会田誠/三瀬夏之介

守屋多々志~平成の宮廷画家が見せた亀裂  
富山妙子~汎アジア神話という視点
岡本信治郎~ポップが示唆する戦前と戦後の連続性
現代アートにおける、日本と場所性の台頭~中村政人
中ハシ克シゲ~プラモデル世代が表現する日本の虚無
会田誠~新人類世代の反骨戯画
三瀬夏之介~現代に再生した神話の意味


第8章  仮構なる制度の実相を暴く
柳幸典/飴屋法水/伊藤敦/杉本博司

モダニズムからポストモダニズムへ。必要なのは政治性か社会性か
柳幸典~天皇制と国家の虚を暴くフラットな視点
市場中心主義から、共同体回帰へ
飴屋法水~「人間」を成立させない日本社会
伊藤敦~広島出身作家が抱いた、X─DAYへの違和感
杉本博司~虚構なるが制度は虚ならず
ロゴスによる世界支配。永遠を探究する意味とは?



第9章  逸脱による解放の表現へ
嶋田美子/森村泰昌/照屋勇賢

多文化主義という、一九九〇年代のアートシーン
嶋田美子~日本近代のダブルスタンダードをあばく
支配/被支配。権力を両義的にとらえる視座の意味
森村泰昌~チャップリンの独裁者と天皇制批判
誰もが知る英雄の陰に隠れた、無名の人々の視点
照屋勇賢~沖縄の英雄と一緒に並ぶ昭和天皇
伝統工芸紅型に込められた抵抗とテーゲーの思想



第10章  公共性と天皇制
アトミックサンシャインの中へ沖縄/大榎淳/長澤伸穂とミノル・コリン/1953年ライトアップ展/彦坂尚嘉/靉嘔/宇川直宏/カオス*ラウンジ


第二次大浦事件があぶり出す、憲法九条信仰の陥穽
美術と政治は無関係な存在なのか?
富士ゼロックス事件。大榎淳は日常に潜む天皇制を暴く
長澤伸穂とミノル・コリン~アクションとしての美術表現
1953年ライトアップ展。消された表現者たち
彦坂尚嘉〈皇居美術館プロジェクト〉~前衛の公共性との関わり方
靉嘔、宇川直宏~環境としての天皇制をあぶり出す
カオス*ラウンジとそれを支えるアーキテクチャ
日本社会での「個」への懐疑がもたらすもの
公共性をめぐる隘路。現われとしての美術表現とは


 終章  共和のルーツ
横井小楠と渡辺崋山に見る、日本の「天」

幕末の横井小楠は、儒教に共和主義を見いだした
渡辺崋山が再生させたのは、文人画の思想性


     あとがき
天皇美術論・参考文献
図版提供・出典一覧

著者略歴

アライ=ヒロユキ
1965年生まれ。美術・文化社会批評。美術、社会思想、サブカルチャーなどをフィールドに、雑誌、新聞、ポータルサイト、展覧会図録などに執筆。
著書に『ニューイングランド紀行 アメリカ東部・共生の道』(繊研新聞社)、『宇宙戦艦ヤマトと70年代ニッポン』(社会評論社)ほか。

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