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図書目録

カルチャー 【文芸批評】

〈時間〉の痕跡 (上)

〈時間〉の痕跡 (上)

プルースト『失われた時を求めて』全7篇をたどる

青木幸美

価格: 4500円+税
発行日: 2016年2月15日
版型: A5判上製
ページ数: 478頁
ISBNコード: ISBN978-4-7845-1914-9
Cコード: C0030

詳細内容

作品全体からプルーストの〈時間〉との闘いのありようを解明する初の研究書


 マルセル・プルースト(1871-1922)は,パリ・コミューンの直後にパリ郊外に生まれ,最後の社交界人の一人であった.父は小市民階級出身の著名な医師,母は裕福なユダヤ系金融業者の娘である.同性愛者であり,マザコンであり,生涯喘息に悩まされた.

 『失われた時を求めて』(1913-1927)は,主人公であり語り手でもある「私」の人生と恋愛の遍歴を複雑な時間構成でたどり,無意志的記憶の喚起によって意識の深層に光をあてた作品で,小説の概念に新たな局面をもたらした.ある冬の日,紅茶にひたしたマドレーヌを口に含むと,一挙に,コンブレーで過ごした少年の日々がよみがえる.これが有名な無意志的記憶による「無意識的想起」である.主人公は,過去の感覚がよみがえる喜びの瞬間に,なぜ,時間の秩序から解放され,死をも恐れなくなるのか,その意味が分からず,その探求にとりかかることができずに無為のうちに日々を過ごす.そして長い年月を経た後に,唯一の方法は芸術作品をつくることだと啓示を受け,自らの「内面の物語」を書きはじめる.

 本書『〈時間〉の痕跡』は,作中の〈時間〉の痕跡をたどりながら,具体的に時間形成と意味形成を分析してクロノロジー(年代記)を作成する.『失われた時を求めて』は1880年生まれの一文学青年の精神史を描きだしたものであるが,なぜ,プルーストは主人公を自らより10歳ほど若く設定したのであろうか? 本書は,その意味を明らかにしつつ,愛や芸術といったテーマ別に作品分析を行うのではなく,全7篇の文脈をていねいにたどることで複雑に絡み合った〈時間〉の構造を解きほぐしていく.と同時に,それが著者マルセル・プルーストの〈時間〉との闘いの軌跡でもあることを示す.なぜこの作品が文学のみならず,歴史的,社会的にも,19世紀と20世紀,近代と現代とを架橋するものとなっているのか,プルーストの〈時間〉との闘いのありようを解明する.

【目次】

序章 テクスト区分とクロノロジー
第1章 不眠の夜
第2章 コンブレーの時代
第3章 スワンの恋
第4章 土地の名の夢想、パリのスワンのほう
第5章 バルベック Ⅰ

著者略歴

青木幸美
1986年大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。フランス文学研究。

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