レポート:中村浩訳さんトークイベント「郷土玩具の世界」(川口市立映像・情報センターメディアセブン)

川口市立映像・情報センターメディアセブンで「郷土玩具の世界」と題して中村浩訳さんのトークイベントがありました。(2018年11月18日)

収集した品物の数で他を圧倒する収集家の苦労話ではなくて、むしろそうなった際に家族とどううまくやっていくものか。買ってきた物を家の近くに置いておき、家人が不在になるのを待ってさっと棚に並べてしまう。家人には安かったと言ってあるから、向こうとすれば捨てても良かろうと思うだろう・・・と聴く者を笑わせます。さすが長年をかけて郷土玩具を集めてきたからこそのユーモア。

でも家族にとっては物量への不満とは限りません。例えばギョロッと目をこちらにむいている顔の描かれた大きな凧が、大空ではなく部屋に飾られてあれば、子どもでなくてもギョギョッと驚かされる。よかれと飾ってみても、苦手な家族もいる。収集への理解は難しいようです。

明治以来、収集家たちが郷土玩具と呼んだ置物や飾り、お守りは、日本各地の風土に合わせた材料や塗料であったり、伝説や風習とつながって生まれているものだという話を受けてから、会場に並べられた玩具の品々を見られたのも新しい楽しさを感じました。一つ一つから受ける素朴さは、ぐるぐる何度も巡って見直してみても、不思議と飽きが来ないものです。

数こそ少なくなっても職人が今も手仕事で作る郷土玩具。中村さんたちの活動の先にはいつもそうした職人の話があります。そこに古き良き日本の姿があるといえば大げさかも知れませんが、日本の昔にはこれらを楽しんだ庶民の遊び心、味わいがあったということは忘れてはいけないと思います。

中村さんが郷土玩具の「三春張子」の作者を訪ねて出向いた福島県の庭先で、旅の疲れも出たのでしょう、ふいに気が抜けて、目の前の青空と山だけを認めてくつろいでいた時のこと。飛行機も新幹線からも遠い里山で、鳥の声くらいの静けさに三春張り子の近くで座っているひとときは、まるで江戸時代にタイムスリップした気にもなって、昔もこうした風景を前に誰かが三春張り子を愛でていたのかも知れないと想像する。そんなことが、郷土玩具を味わうということなのかも知れないと思った。そう話すのを聞くと、職人のいる里山への旅情をかきたてられます。2011年3月11日の東日本大震災の後、すっかり一変した社会の中で、この地で「復興だるま」が作られもしました。

メディアセブンでは、郷土玩具の次に12月15日「俚謡山脈の民謡を訪ねて」(俚謡山脈 DJユニット/ムード山+TAKUMI SAITO)、12月22日「闇を歩く~ナイトウォークのススメ」(中野純)が予定されています。

文責・板垣誠一郎


▷ 川口市立映像・情報センターメディアセブン
http://www.mediaseven.jp/

▷ 中村コレクション
http://www.osaji.co.jp/nakamura-collection/


達磨からだるまものしり大辞典
中村浩訳/著

定価=本体1500円+税 ISBN978-4-7845-1903-3
2011年刊

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おもちゃ博士・清水晴風
郷土玩具の美を発見した男の生涯
林直輝 近松義昭 中村浩訳/著

定価=本体2700円+税 ISBN978-4-7845-0949-2
2010年刊

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