| 詳報 | 鈴木裕子/著 天皇家の女たち 古代から現代まで 社会評論社刊

メディア掲載

・週刊読書人 2019/5/24 書評「天皇と天皇制を考える 時宜を得た刊行にして、主権者必読の書(評者 渡邊澄子)」
・週刊金曜日 2019/6/7 書評「「血の継承」が苦しめる天皇家の女性の系譜」(評者 石川逸子)


〈吾平津媛(神武天皇の妃)、額田部王女(推古天皇)から皇太子妃雅子、愛子内親王まで〉

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| 詳報 | 田上孝一編著 支配の政治理論

A5判並製270頁 定価=本体2400円+税
ISBN978-4-7845-1566-0 2018年12月刊


編者序文より

本書は2017年2月に同じ社会評論社より刊行した『権利の哲学入門』の続編として企画されたものである。

前著では現代社会を考えるに当たっての鍵概念として権利を選び、新進気鋭の若手研究者を中心とした執筆陣による力作を集めることができた。幸いにも前著は好評をもって迎えられ、執筆に参加した若手研究者にとっても有益な研究業績とすることができた。今回の本ではこの実績を踏まえて、権利と同じように現代社会を考える上で重要な概念になると思われる、支配の問題を取上げる。

前著の序文では、人間にとって必須な存在の内に、人間生活にとって重要であればあるほど、それへのニーズが常に満たされ、その存在自体が意識されないのが望ましいものがあるとして、まさに権利はそのような存在の一つではないかと指摘した。権利が意識されるのは往々にしてそれが損なわれている状況においてであり、権利が満たされている場合に人は権利それ自体を意識しないものだと述べたのである。

今回取上げる支配も、権利同様にこうした関係が成立するのではないかと思われる。多くの人が集い社会を形成する以上は、常に何らかの利害対立が生じざるを得ない。この際、対立が社会自体を解体せしめるまでに先鋭化しないように、利害を調整する必要が生じる。この場合、各個人は何らかの社会規範へと強制されるわけで、このような強制それ自体を支配といってしまえば、人間社会に支配は付き物である。しかし通常はこのような強制一般を支配とは言わない。強制が支配として意識されるのは、本来は適用されるべきではない範囲にまで強制が広がってきた場合である。特に個人生活における自由、とりわけ内面の自由が侵されていると感じたとき、人は強く支配というものを意識するのではないか。支配も権利同様に、過不足なく適用されている場合は、人々はその存在自体を意識しない。権利はその不足が意識され、支配はその過剰が意識されるのである。

実際、支配的な権力を有する為政者は、自らの支配欲を満たす場合は勿論、そのような邪な欲望がなくても、被治者を管理し易くするという官僚主義的なニーズに促されて、支配の領域を常に拡張しようとする傾向を持たざるを得ない。まさにこれこれこそが、現代の日本で起きている現象ではないか。(以下、本書)

田上孝一

《編著者》田上孝一(たがみ こういち)
1967年 東京生まれ
1989年 法政大学文学部哲学科卒業
1991年 立正大学大学院文学研究科哲学専攻修士課程修了
2000年 博士(文学)(立正大学)
現在 立正大学非常勤講師・立正大学人文科学研究所研究員
主要著書 『初期マルクスの疎外論──疎外論超克説批判──』(時潮社、2000年)、『実践の環境倫理学──肉食・タバコ・クルマ社会へのオルタナティヴ──』(時潮社、2006年)、『フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる倫理学』(日本実業出版社、2010年)、『マルクス疎外論の諸相』(時潮社、2013年)、『マルクス疎外論の視座』(本の泉社、2015年)、『環境と動物の倫理』(本の泉社、2017年)、『マルクス哲学入門』(社会評論社、2018年)

目次と執筆者紹介


序文


第Ⅰ部  政治支配の思想史


第1章 プラトンの支配論 ──魂への配慮としての政治

隠岐-須賀麻衣

はじめに
1. 何のための「政治」か
2. 魂への配慮
3. 支配の理論
3–1. 哲学と政治的権力の統合:『国家』の場合
3–2. 法による支配:『法律』の場合
3–3. 二つの支配の交差
おわりに
隠岐-須賀麻衣(おき- すが まい)1985年生まれ テュービンゲン大学客員研究員 政治思想史専攻 博士(政治学)
• 主要業績 「プラトン『ポリテイア』における詩と物語」(日本政治学会編『年報 政治学』2014年I 号、木鐸社、2014年)、『古代ギリシャ語語彙集』
(共訳、大阪公立大学共同出版会、2016 年)、"An Invitation from Plato: A Philosophical Journey to Knowledge"(Paths of Knowledge : Interconnection(s) between Knowledge and Journey in the Graeco-Roman World, Edition Topoi近刊)

第2章 マキァヴェッリの支配論 ──その近代性に関する若干の指摘

村田玲

はじめに
1. 僭主政治の教説
2. 教会権力の問題
3. 喜劇の誕生
おわりに
村田 玲(むらた あきら)1978年生まれ 金沢大学客員研究員 政治哲学史専攻 博士(政治学)
• 主要業績 『喜劇の誕生─マキァヴェッリの文芸諸作品と政治哲学』(風行社、2016年)、"Machiavelli’s La Umana Commedia: key thoughts on understanding his major political works", A Journal of Political Philosophy, No.24, Summer, 2018、レオ・シュトラウス『哲学者マキァヴェッリについて』(共訳、勁草書房、2011年)

第3章 スピノザの支配論  ──個人・社会・国家の安定化機能としての宗教

服部美樹

はじめに
1. 最高権力形成──自然的結合と社会契約論
2. 宗教の意義と機能──服従の教えと喜びの感情の増大
3. 国家の基礎にして庶民の社会倫理としての啓示宗教
4. 各政体と教会制度
おわりに
服部美樹(はっとり みき) 政治思想専攻
• 主要業績 「17世紀ネーデルラント共和国と啓蒙──ネーデルラント・カルテジアンとスピノザ」(佐藤正志編『啓蒙と政治』、早稲田大学出版部、2009年、所収)、「スピノザにおける神政国家と民主政の関係──法の可能性と民主政の不可能性」(飯島昇藏・中金聡・太田義器編『「政治哲学」のために』、行路社、2014 年、所収)、「スピノザにおけるコナトゥスと自然権(一)」(2002年5月20日「早稲田政治公報研究」第69号)

第4章 アダム・スミスの支配論  ──支配を必要としない社会のしくみを描く

玉手慎太郎

はじめに
1. 本章の課題
2.『国富論』について
2-1. 分業
2-2. 分業と市場
2-3. 分業と自然調和
2-4. 政府と支配
3.『道徳感情論』について
3-1. 同感
3-2. 同感と自然調和
おわりに
玉手慎太郎(たまて しんたろう) 1986年生まれ 東京大学大学院医学系研究科医療倫理学分野特任研究員 経済学専攻 博士(経済学)
• 主要業績:『権利の哲学入門』(共著、社会評論社、2017年) 、"External Norms and Systematically Observed Norms"(Japanese Economic Review, Volume 66, Issue2, 2015)、「健康の自己責任論に対する2つの反論とその前提」(『医学哲学・医学倫理』36号、2018年)

第5章 J.S. ミルの支配論  ──政府の強制的介入を通じた幸福の最大化

小沢佳史

はじめに
1. ミルの功利主義と危害原理
2. 帝国内の属国の人々に対する支配
2-1. 非文明的属国
2-2. 文明的属国
3. 自国の人々に対する支配 (1) ──歳出面
3-1. 未成年者への教育
3-2. 軍隊による治安の維持
4. 自国の人々に対する支配 (2)──歳入面(見せびらかしの消費と飲酒への政府介入)
おわりに
小沢佳史(おざわ よしふみ)1985 年生まれ 九州産業大学経済学部経済学科講師 経済学史・社会思想史専攻 博士(経済学)
• 主要業績 『権利の哲学入門』(共著、社会評論社、2017 年)、「停止状態に関するJ.S.ミルの展望──アソシエーション論の変遷と理想的な停止状態の実現過程──」(経済理論学会編『季刊・経済理論』第49 巻第4 号、桜井書店、2013 年)、「J.S. ミルの保護貿易政策論──一時的な保護関税をめぐって──」(マルサス学会編『マルサス学会年報』第23 号、雄松堂書店、2014年)

第6章 マルクスの支配論 ──生産力の制御とゲノッセンシャフト

田上孝一

はじめに
1. 常識イデオロギーによる支配
2. 支配の本質
3. 被支配者による支配構造の再生産
4. 支配の原因としての分業
5. 愛を原理とするゲノッセンシャフト
おわりに

第7章 ニーチェの支配論  ──「力への意志」における支配概念の考察

飯田明日美

はじめに
1. 奴隷道徳の発生史
1-1. 二千年前の善悪の基準
1-2. キリスト教道徳という「奴隷道徳(die Sklaven-Moral)」の発生
2. 奴隷道徳批判
2-1. ニヒリズムという病(奴隷道徳の育成した人間)
2-2. 弱者の自己欺瞞
3.「力への意志」と支配
3-1.「力への意志」とは即ち支配を求めること
3-2.「支配」の具体像
おわりに
飯田明日美(いいだ あすみ)お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科博士後期課程 比較社会 文化学専攻 
• 主要業績 「『根源的一者』再考 ──芸術的遊戯としての『根源=一』へ──」(日本ショーペンハウアー協会『ショーペンハウアー研究』別巻3号、2016 年)

第8章 ベルクソンの支配論 ──社会的抵抗の目的と動機

斉藤尚

はじめに
1.『試論』における自由な行為
2. 自由な行為の政治的・経済的意義
2-1. 内的自由の維持としての自由な行為
2-2. 社会抵抗としての自由な行為
①政治的な抵抗の可能性
②経済的な抵抗の可能性
③新たな疑問点
3. ベルクソンと実践
4. 社会的抵抗の道徳性
おわりに
斉藤 尚(さいとう なお)東北学院大学経済学部共生社会経済学科准教授 公共哲学専攻 博士(政治学)
• 主要業績 『社会的合意と時間:「アローの定理」の哲学的含意』(木鐸社、2017年)、“The Transformation of Kenneth Arrow’s Attitude toward War”( 共著,War in the History of Economic Thought: Economists and the question of war (Routledge Studies in the History of Economics), Routledge, 2018)

第9章 フランクフルト学派の支配論 ──〈支配の理性〉と〈支配批判の理性〉

楠秀樹

はじめに
1.「フランクフルト学派」とは何か?
2.〈 支配の理性〉
2-1.『第三帝国前夜のドイツの労働者とホワイトカラー─その社会心理学的研究─』(1929) ──プロレタリアートの統合と知識人の孤独
2-2.『権威と家族』(1936)──小なる権威から大なる権威へ
2-3.『権威主義的パーソナリティ』(1950) と『啓蒙の弁証法』(1947) ── 悲観的支配論
3.〈支配批判の理性〉
3-1.『公共性の構造転換』(1962) ──第一世代から第二世代において継続する悲観的支配論
3-2.『イデオロギーとしての技術と科学』(1968) ──システム支配に対する生活世界の視点
おわりに
楠 秀樹(くすのき ひでき) 1970 年生まれ 東洋大学・東京理科大学非常勤講師 社会学理論・社会学史・社会思想史専攻 博士( 社会学)
• 主要業績 『ホルクハイマーの社会研究と初期ドイツ社会学』(社会評論社、2008年)、『<社会のセキュリティ> を生きる─「安全」「安心」と「幸福」との関係』(共編著、学文社、2017年)、『ケアの始まる場所─哲学・倫理学・社会学・教育学からの11章』(共著、ナカニシヤ出版、2015年)

第Ⅱ部  政治支配と現代


第10章 リベラリズムと支配  ──ロールズのリベラリズムと非支配としての自由

宮本雅也

はじめに
1. 積極的自由と消極的自由の二分法
2. 多元主義とロールズの正当化を重視するリベラリズム
3. 正当化を重視するリベラリズムと非支配としての自由
おわりに
宮本雅也(みやもと まさや) 1989年生まれ 早稲田大学教育・総合科学学術院助手 早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程 現代政治哲学専攻
• 主要業績 『ロールズを読む』(共著、ナカニシヤ出版、2018 年)、「分配的正義における功績概念の位置づけ─ロールズにおける功績の限定戦略の擁護」(『政治思想研究』第15 号、風行社、2015 年)

第11章 コミュニタリアニズムと支配  ──公・私・共の三領域とその緊張関係の擁護

奥田恒

はじめに
1. 応答するコミュニタリアニズムとその背景
1-1. アカデミック・コミュニタリアニズム
1-2. 応答するコミュニタリアニズム
2. 二つの支配への抵抗
2-1. 個人主義批判
2-2. 保守主義との異同
2-3. 自律と秩序のバランス
3. コミュニタリアニズムと政府・町内会関係
3-1. 町内会の基本的特徴
3-2. 緊張関係の維持と「伝統による支配」
おわりに
奥田 恒(おくだ ひさし)1985 年生まれ 京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程 神戸学院大学非常勤講師 政治学・公共政策学専攻
• 主要業績 「『ゲームの継続』のための公共政策」(『立命館言語文化研究』28巻1号、2016年)、「『心理的な事実』にもとづく世界の貧困削減」(『人間・環境学』第25巻、2016年)、「ナッジ政策による公共問題解決のアプローチ」(『政策情報学会誌』第11巻第1号、2017年)

第12章 功利主義と支配  ──リバタリアン・パターナリズムの擁護論から

木山幸輔

はじめに
1. 功利主義とは何か
2. リバタリアン・パターナリズムとは何か
3. 功利主義とリバタリアン・パターナリズム
3-1 リバタリアン・パターナリズムを擁護する功利主義?
3-2. J・S・ミルとリバタリアン・パターナリズム 
3-3. P・シンガーとリバタリアン・パターナリズム
4. リバタリアン・パターナリズムの功利主義的擁護論への批判:功利主義と支配
4-1. リバタリアン・パターナリズムとそれを用いる援助構想への支配に関連する異論
(a) 統治の目標における支配:目指される福利についての共約不可能性?
(b) 統治者と被治者の関係における支配:統治者の能力と被治者の無能?
(c) 統治行為の支配化:独創性の妨げとなる心的態度?
4-2. 支配に関して再照射される功利主義とそのありうる応答
おわりに
木山幸輔(きやま こうすけ) 1989 年生まれ 日本学術振興会特別研究員PD 政治理論・開発学専攻
• 主要業績 『ロールズを読む』( 共著、ナカニシヤ出版、2018 年)、「J・ラズの人権構想の検討: 人権の哲学の対立において」『法哲学年報』2016 号( 有斐閣、2017年)、「人権の哲学の対立において自然本性的構想を擁護する:チャールズ・ベイツによる批判への応答」『法と哲学』4号( 信山社、2018年)

第13章 グローバリゼーションと支配 ──植民地主義の悪性を題材として

福原正人

はじめに
1. 植民地主義それ自体の悪
2. 実際の同意
3. 適格な受容可能性
4. グローバルな支配関係
おわりに
福原正人(ふくはら まさと) 1984年生まれ 高崎経済大学経済学部他非常勤講師 政治哲学専攻
• 主要業績 「領有権の正当化理論──国家は何をもって領土支配を確立するのか」『法と哲学』第三号(信山社、2017年)、「人の移動と国境管理ーー参入、離脱、受容可能性」松元雅和、井上彰編『人口問題の正義論』(世界思想社、2018年)、「民主主義の境界画定──正当性と正統性」『年報政治』2018 年度第II号(掲載予定)

第14章 バイオテクノロジーと支配 ──フーコーの司牧権力の観点から

三羽恵梨子

はじめに
1. バイオテクノロジーと医療をめぐる支配関係
2. インフォームド・コンセントの考え方の発展
3. フーコーの司牧権力論
4. インフォームド・コンセントはいかにして専門家支配への抵抗でありえたか
5. ヘルスプロモーション
おわりに
三羽恵梨子(みわ えりこ)1986年生まれ 東京大学大学院医学系研究科医療倫理学分野博士後期課程 上尾中央看護専門学校非常勤講師
• 主要業績 「出力型Brain-Computer Interface に関する倫理的論点とその考察」(『生命倫理』29号、日本生命倫理学会、2018年)

第15章 支配の経済学  ──自由な経済学における二重の支配

笠井高人

はじめに
1. 自由な経済学
2. 経済学による支配
3. 支配された経済学
おわりに
笠井高人(かさい たかと)1986年生まれ 鹿児島大学教育学部特任講師 経済学史専攻 博士(経済学)
• 主要業績 「カール・ポランニーの功利主義批判とベンサムへの評価:二重の運動と社会主義」(『経済学論叢』第68巻第3号,同志社大学経済学部,2016年)、"The Cause of War and Role of People by Karl Polanyi: A Change in Realm of International Relations after The Great Transformation"( Journal of Economic and Social Thought, Volume 4, Issue 1, 2017)、「カール・ポランニーの『複合社会』と公共の射程」(『社会科学研究年報』第47号,龍谷大学社会科学研究所,2017年)

第16章 支配の社会学 ──ウェーバーの支配論

宮崎智絵

はじめに
1. ウェーバーにおける支配の概念
2. 支配の三類型
2-1 合法的支配(legale Herrschaft)
2-2 伝統的支配(traditionale Herrschaft)
2-3 カリスマ的支配(charismatische Herrschaft)
3. 支配の正当性
4. ウェーバー支配論の意義
おわりに
宮崎智絵(みやざき ちえ)立正大学・日本大学・二松学舎大学非常勤講師 社会学専攻
• 主要業績 「カースト社会の< 不浄>・< ケガレ> と浄化儀礼」( 沼義昭博士古稀記念論文集編集委員会編『宗教と社会生活の諸相』隆文社、1998年、所収)、「カースト制における権力と教育の作用」(『二松学舎大学国際政経論集』第17号、二松学舎大学、2011年)、「差別と平等から見るカースト制の形成と構造」(『二松学舎大学論集』第57号、二松学舎大学、2014年)

第17章 支配の神学 ──無支配を目指す未来学

福嶋揚

はじめに
1. 神学とは何か
2. 聖書における「支配」
3.「主」「全能」「力」
4. 社会倫理的に見た「支配」
4-1. 国家と資本への対抗運動としてのバルト神学
4-2. 柄谷行人の交換様式論
4-3. 交換様式論とキリスト教
おわりに─未来学としての神学
福嶋 揚(ふくしま よう)1968年生まれ 青山学院大学・東京神学大学・日本聖書神学校兼任講師 神学・倫理学専攻 神学博士
• 主要業績 Aus dem Tode das Leben. Eine Untersuchung zu Karl Barths Todes- und Lebensverständnis (Theologischer Verlag Zürich 2009)、『カール・バルト 破局のなかの希望』(ぷねうま舎、2015年)、『カール・バルト 未来学としての神学』(日本基督教団出版局、2018年)

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| 詳報 |  石山 春平/著 ボンちゃんは82歳、元気だよ! – あるハンセン病回復者の物語り

絶望の淵に立たされた時、人はどのようにして自分をたて直すのか──

 

「ボンちゃん」との対談 樹木希林

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| 詳報 | 堀利和/著『障害者から「共民社会」のイマジン』

「市民社会」を変革する「共民社会」の構想のために

障害者から「共民社会」のイマジン

堀利和/著

定価=本体1700円+税 四六判並製224頁
ISBN978-4-7845-2411-2

著者は静岡市の小学校入学前、スティーブンジョンソン病という難病になり、その後遺症で弱視になったため、静岡盲学校に転校する。その後、東京教育大学付属盲学校に転入し、そこから明治学院大学に進学する。卒業後、保育園の産休補助の保父、養護学校のスクールバスの添乗員、点字講習会の講師として働く。そして参議院議員を12年間務める。

現在、障害のある人ない人が共に対等平等に働く事業所づくりをしているNPO法人共同連の代表。さまざまな障害者運動や地域の活動にかかわりながら、労働力の商品化・市場経済を前提とする現在の「市民社会」を、共同社会に向けて変革するための問題提起を精力的に展開している。

本書に収録したさまざまな論考は、この間の著者の発言集。「市民社会」から「共民社会」へという構想の多様な素材をそこから読み取ることができるでしょう。

2018年9月上旬刊


目 次


序 章 「共民社会」へのイマジン

第1部 障害者か健常者か、それが問題だ!

第1章 共生
1 津久井やまゆり園事件とは ─共生社会に向けた私たちの課題は何か
2 障害者理念(言葉)泥棒
3 共生の遺伝子
4 人間関係って、な~に?

第2章 共働
1 社会的事業所の見方・考え方
2 労働包摂型社会的企業、すなわち社会的事業所
3 社会的事業所論
4 日本における障害者就労の「多様」な形態と欧州・韓国の社会的企業
5 働きたい者は共同連にと~まれ!
6 仕事に障害者を合わせるのではなく、障害者に仕事を!

第3章 共学
1 総論としての合理的配慮
2 各論としての合理的配慮
3 ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)としての合理的配慮

第4章 共飲

第2部 コラム ザ・障害者

第5章 影から光が見えてくる
◦津波てんでんこ
◦世界で最も短い長編小説
◦新潟越後の評価に寄せて
◦今日の格差社会に、戦後の歌が響く

第6章 世界に類のない日本の盲人史

第7章 日常の羅針盤
◦盲人とことばたち
◦堀利和の世界
◦テーブルマナー

第8 章 世の中の現象学
◦差別社会の外に
◦公平ってな~に?
◦99%の異常
◦「個人的労働」のアウフへーベンを求めて
◦右手に虫めがね、左手に望遠鏡を!
◦日常の断絶と連続性
◦労苦と労働を越えて(未来経済学ノート)
◦共働専門家受容
◦「合成の誤謬」っておもしろい!
◦日本史のウソとホント
◦現象から原因をさぐろう!

第9章 主体探しの旅
◦我が共同連宣言
◦一年と半年をふり返って
◦堀五、六
◦我が「行動綱領」
◦「支援」から「共に」へ
◦共同連と「生活困窮者自立支援法」の関係の二側面
◦表記「障害者」の思想的意味
◦絶対否定から絶対肯定へ
◦障害者にも「働き方改革」が必要だ!
◦岡山地裁が「合理的配慮」に対する画期的な、しかし当然の判決!
◦行政は後からついてくる
◦地域とわたし
◦「偏見」と「だから」の思想
◦障害者団体も万年与党と万年野党

第10章 もう一つのアジア障害者国際交流モンゴル大会

書 評
堀利和著『アソシエーションの政治・経済学』(評者・鈴木 岳)

終 章 理論と実践からのオルタナティブな視座


著者より読者へ

本書は、最近私が書いたり講演したりしたものを読み物として一冊の本にまとめたものです。まとめるにあたって、障害者問題を基点にして社会変革への展望をイマジンしました。私の問題意識は、社会科学としての障害学、障害社会科学であり、障害者問題を狭義の意味での福祉論、社会保障論に終わらせたくないのです。その障害者問題は必然的に哲学、政治学、経済学、社会学等の分野にまで踏み込み、普遍主義としての社会変革に通底します。

私が障害者問題に初めて出会ったのは一九七三年のことです。それまでは六〇年代後半の政治社会状況の中にあって、ベトナム反戦運動、七〇年安保闘争、学園闘争、沖縄奪還闘争、三里塚闘争、石川青年奪還の狭山裁判闘争、そして赤堀冤罪事件差別裁判闘争などを闘っていました。このような「闘争」の時代でした。それはとりもなおさず、人間解放の闘いです。

七一年から七二年、七三年と、闘争は次第に挫折していきます。その後一、二年私は本を読むだけのひきこもり生活に入りましたが、大学受験を拒否された二人の重度脳性マヒ者が聴講生となって、その「聴講生」問題に関わりました。それが一九七三年です。同時に、有楽町の都庁本館第一庁舎前で座り込みテント闘争をしていた都立府中療育センター闘争にも関わることになります。私たちの七〇年代は、障害者解放運動でした。以来、今日まで、障害者問題に関わり続けています。

※序章より抜粋


著者紹介 (ほり としかず)小学校4年生の時、清水小学校から静岡盲学校小学部に転校、東京教育大学附属盲学校高等部、明治学院大学、日本社会事業学校卒。参議院議員二期(社会党、民主党)。立教大学兼任講師。現在、特定非営利活動法人共同連代表。『季刊福祉労働』編集長。著書『障害者と職業選択』共著三一書房(1979年)、『なかよくケンカしな─臨時障害者教育審議会設置法をめざして─』社会新報ブックレット(1994年)、『生きざま政治のネットワーク』編著現代書館(1995年、2016年にモンゴルで出版)、『共生社会論―障がい者が解く「共生の遺伝子」説―』現代書館(2011年)、『日本初共生・共働の社会的企業―経済の民主主義と公平な分配を求めて─』特定非営利活動法人共同連編現代書館(2012年)、『はじめての障害者問題―社会が変われば「障害」も変わる―』現代書館(2013年)、『障害者が労働力商品を止揚したいわけ―きらないわけないともにはたらく―』編著社会評論社(2015年)、『アソシエーションの政治・経済学―人間学としての障害者問題と社会システム─』社会評論社(2016年)、『私たちの津久井やまゆり園事件─障害者とともに〈共生社会〉の明日へ─』編著 社会評論社(2017年)ほか


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【話題の新刊】 堀利和/編 私たちの津久井やまゆり園事件─障害者とともに〈共生社会〉の明日へ

| 詳報 | 坂本進一郎/著『大地に生きる百姓 農業つぶしの国策に抗って』

取られてたまるか!
緊迫する成田の新たな土地収奪

戦乱の満洲から生還、北東開発公庫を中途退職し大潟村入植。日本を切り売りする自民党・亡国農政と格闘してきた著者による政策批判。世紀を越えて闘う三里塚農民への連帯の書。[2018年9月上旬刊]

大地に生きる百姓
─農業つぶしの国策に抗って─

坂本進一郎/著

定価=本体1800円+税 四六判並製256頁
ISBN978-4-7845-1853-1


目 次


刊行にあたって

【第Ⅰ部】 世紀を超えた成田の農民闘争

〔序〕市東孝雄さんの闘いに寄せて

〝民事強制執行〟という新手の土地収用
形になった人権思想/虫けら扱いされてたまるか/農地は公的財産/裁判の経過を振り返る/土地収用のデタラメ

農地法で農家をつぶす愚行
農地は先祖とムラからの預かりもの/農工間格差により揺れ始めた農地法/農地観に守られ存続している農地法

亡国農政と三里塚
絶えて久しい「農業の曲がり角」論/アメリカへの「おべっか外交」/トカゲのしっぽ切りの農産物自由化/「自由貿易信仰」を流布する東京のマスコミ/「人、作物、農地」の三奪作戦

「農地は我が命」の農業観

自由民権運動の伏流水 ──谷中村、秩父事件と三里塚

【第Ⅱ部】 亡国農政を批判する

〔序〕戦乱の満洲から秋田・大潟村へ

亡穀は亡国なり ──農に生きる思想と歴史観〔講演録蒐集〕
⑴ 田中正造の怒り
⑵ 農業と工業の違いは煙突があるかないかだけだ
⑶ 政治の季節から経済の季節へ
⑷ 亡国農政の歴史  傾斜生産方式──作物さらい、人さらい、ムラさらい/小農複合経営の解体(大規模化)/日本農政の縮図としての大潟村/企業大国・生活小国/三奪作戦/一九三〇年体制の解体
⑸ 抵抗権の希薄な国民   レジスタンス本場ヨーロッパのデモ風景/明治維新とは何だったのか/明治革命の芽はあった
⑹ 如何にして農業再生は可能か  農業の位置づけをはっきりさせること/自由民権(民主主義)の復権/不足払い制度(戸別所得補償制度)の復権・拡充を!

TPPに感じる「恐怖」 ──日本が日本でなくなる日
外交べたの日本/WTO体制は米国農政の〝国際版〟/行き過ぎた自由貿易信仰

正体を暴露した多国籍企業 ──TPP交渉の本質は何か
仮面をかぶる多国籍企業/多国籍企業の野望/資本の論理か生活者の論理か

モンサント社に奉仕する安倍政権 ──種子法廃止法案を見て思う
天からの授かり物/食べ物は尊厳なもの

なりゆきまかせの日本人
焼け野原の日本農業/なぜここまで来てしまったのか/なりゆきまかせ/「豊葦原瑞穂の国」を取り戻そう

人間の顔をした農業か無機質の農業か ──農民の人権は守られているか
農業の現状/憲法問題/農業複合経営と工業的農業/農業基本法と農業守護神・石黒農政/民主主義は企業の門前で立ちすくむ/ガラクタの山にされた日本の農業/国土観あるいは農地観/農業観のあいまいな日本

「食管法は本当に不要ですか?」 ──お蔵入りした原稿を読み直して
同じ穴の貉/食管法理念の解体/食管法潰しの応援団

焦眉の急の戸別所得補償制度
美しい農村風景はどこから来たか/大聖堂構築に似た共通農業政策の積み重ね/ドイツ、フランスとは違うイギリス農業/ニワトリが先かタマゴが先か

米櫃を空っぽにしても平気な日本人
よくもまあ下げたものだ/イギリスの後追いの日本/マーチャント国家・古代フェニキアの顛末/自由貿易信仰一辺倒の日本の歪み/農業再生には民主主義の再生が必要

日本を切り売りする自民党農政
自由貿易には落とし穴がある/六二%の日本切り売り

再び、ムラ論 ──X年X日の日記より
その一─農地を売る時/その二─農業の根本のところは何か/その三─ムラの様子/その四─ヤミ米をどう見るか/その五─生き方に悩む

▼詩 五編

トンボ

自然の音楽
大地の黙示録
豆つぶの農民

【第Ⅲ部】 戦争と植民地をめぐって

〔序〕植民地人としての「献身」

「流転坊」の父 ──日本人の膨張と縮小に重なる個人史
信玄袋をかついで/泰蔵兄を頼って台湾の学校へ進学/嘉義農林学校に入学/遠き地にて父の悲報を聞く/台湾は第二の故郷/鉄砲玉のように荒っぽい性格/さすらいの東京/魅力なき朝鮮/さあやるぞ!/暗雲垂れこめる/戦争に駆り立てられて/シベリア抑留五年

〔補遺〕父帰終記 ──青春の足跡

日本人として生き、日本人として死んでいった台湾の伯父
八田與一の再評価/近衛兵になった伯父/俺は任期の約束を果たした/嘉義消防署は我が子/受給資格の計算法/人となり⑴/二・二八事件について/人となり⑵/感謝の気持ちか中華思想か

丸川哲史著『台湾ナショナリズム』を読んで
「一つの中国」論を嫌う台湾/植民地近代化の二面性

白井聡著『永続敗戦論』を読んで
はじめに/詭弁の上に成り立つ戦後日本/ウソ話が日米従属の始まり/曖昧を好む日本人/どうやって「戦後」を破るのか

おわりに
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著作一覧


著者より読者へ

日本は食料主権を放棄したかのようである。ここ何年も食料自給率は四〇%を下回り、ついに三八%にまで下げた。問題はここまで下げても、国内は泰平無事を決め込んでいることだ。国民も慣れっこになって「まあまあ主義」の落とし穴に入りこんでしまったようである。これではまるで、根っこの定まらない「流転坊」だ。

私はせめて、ヨーロッパ並みに最低支持価格や定住政策を行い、農家が安心して農業できる政策に転換して貰いたいと強く願う。突拍子もないと言われるかもしれないが、そのためにも食糧管理法の復活を訴えたいのである。この社会の根本を支える農業の大切さと、農民の生活が根っこに座れば、自給率も自然と上がっていく。そして農地法を違法に使った農地収用などという、三里塚の市東さんに対するような邪な考えも通用しなくなるはずである。

ヨーロッパを廻って感じた事は、市民と農家の権利意識である。手厚い所得補償が行われ農家が守られているが、底流にはこの権利意識がある。これはフランス革命のように王様の特権をはぎ取る「反独占」の市民革命を経験したか否かの違いによるらしい。残念ながら日本にはそれがなかった。

資本主義社会は、公平な競争や営業の自由を前提に成り立っている。だが今日、「公平な競争」も「自由」も強者の言葉である。強者のための「公平な競争」であり、強者のための「自由」である。

そして安倍一強と結びついた規制改革推進会議は、種子法廃止に見られるように多国籍企業の召使いになって新自由主義を実践し、われわれに暴論を押し付けている。弱肉強食を推進しており、これで格差が拡大し、民主主義はますます遠ざかって行くであろう。

反独占は政治闘争である。太平無事を決め込む今、政治闘争は死語になって仕舞ったかのようだ。だが、沖縄が頑張っている。三里塚も空港という巨大企業に負けてはいない。ここには「まあまあ主義」を排した、権利意識があるように思う。

坂本進一郎

※本書あとがきを転載


坂本進一郎(さかもと しんいちろう)1941 年 仙台市生まれ、5 歳まで満洲で育つ。1964 年 東北大学経済学部卒。北海道東北開発公庫に奉職。1969 年 北東公庫を退職し、八郎潟干拓地(大潟村)に入植。15ha の耕地を持つ稲作農家となるも、コメ過剰により減反政策が本格化。大潟村は政府の言う「過剰」作付けと青刈り、ヤミ米(食管法違反)と国による農地明け渡し訴訟など、農政による混乱の坩堝となった。著者は青刈り・減反に抵抗してきたが、食管制度護持の立場から減反を受け入れ、ヤミ米には反対した。その後、農政は自由化に向かい、食管法を廃止してコメの自由販売を制度化した。ガットやWTO の貿易交渉に反対してブリュッセル、香港、シアトルへ。FAO(国連食糧農業機関)の会議にも参加した。参議院地方公聴会や衆議院農林部会に公述人として招聘されるなど、農業現場からの発言が注目されてきた。

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特設サイト 野添憲治さんの遺した仕事(社会評論社)

書斎にて(撮影 板垣誠一郎)

ことし2018年4月に野添憲治さんは逝去されました。社会評論社では2005年『秋田県における朝鮮人強制連行─証言と調査の記録─』から2期にわたる野添憲治著作集(みちのく・民の語り全6巻、シリーズ・花岡事件の人たち全4巻)、2016年『樺太(サハリン)が宝の島と呼ばれていたころ─海を渡った出稼ぎ日本人─』まで刊行ができました。野添さんは戦争体験者として最期まで秋田を中心に人々の声を紡ぎ続けてこられました。哀悼の意をこめ、2012年刊『みちのく銃後の残響─無告の戦禍を記録する─』より序文を公開します。

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[レポート]動物塚を見に行く(千葉県我孫子市)~依田賢太郎著『どうぶつのお墓をなぜつくるか』続編刊行

駅前の案内板(2018年6月撮影)

6月の日曜日、我孫子駅に来ました。カワウソを供養した石碑を見学するため、ここで依田さんとお会いする約束。駅前から乗り込んだ阪東バスが橋を渡ると視界は広がります。バス停そばのコンビニで目的地を記した地図のプリントで教示をこうと親身に応じて下さって、進むべきは住宅地の向こうに広がる畑の辺り。

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|| 詳報 || TVドキュメンタリー作家の書き下ろし!! 村上良太/著『立ち上がる夜 <フランス左翼>探検記』

書評掲載

・西日本新聞2018年9月1日付 森元斎氏書評「中心のない社会運動の全体像」

“|| 詳報 || TVドキュメンタリー作家の書き下ろし!! 村上良太/著『立ち上がる夜 <フランス左翼>探検記』” の続きを読む