|刊行情報| マルクス、エンゲルスの国家論  大藪龍介/著

マルクス主義理論研究の道を拓かせた論集を46年ぶり再刊。

『マルクス、エンゲルスの国家論」再刊にあたって(抜粋)

本書は『マルクス、エンゲルスの国家論」、現代思潮社、一九七八年の再刊である。

二〇歳代に全力を尽くした新左翼セクトの活動に挫折した私は、復学した大学院を終えた後も定職に就かず、今後進み行く道についてあれこれ思い悩みながら、『資本論』を中心にマルクス理論を主体化する学習に取り組むとともに、マルクス、エンゲルスの国家論に関する従前の定説に批判的な研究を書き綴った。その諸論文をまとめたのが本書である。一大勢力を築いていた俗流マルクス主義に対する国家論の部面での挑戦であった。(中略)

二一世紀の世界と日本の現状況は、貧富の格差の凄まじい拡大、民主主義の更なる形骸化、強(大)国による弱肉強食の横行、人心操作イデオロギーの氾濫、地球環境の未曽有の破壊、等々、経済的、社会的、政治的、文化的危機を打開し変革するための新たな人間解放理論が緊切に要請されている。マルクス主義は、「マルクス・レーニン主義」と決裂するのみならず、「マルクス・エンゲルス問題」(マルクスとエンゲルスの理論的異同)や「カール・マルクス問題」(初期・中期・後期のマルクスの理論的変遷)を吟味し、更には“本当のマルクス”にも所在する限界や過誤を掴み取って、マルクス理論をも超え出る形での新規開拓を求められている。

マルクス主義と対面する若い世代の活動家や研究者が、旧来の伝習から離れ、マルクスやエンゲルスの古典的な理論の意義と限界を検分する基礎作業の足場の一つとして、『マルクス、エンゲルスの国家論』が役立つことを願っている。

著者


目次

『マルクス、エンゲルスの国家論」再刊にあたって

第一章 若きマルクスの国家観の転回
一 出発点としてのヘーゲル国家哲学批判
二 政治哲学的考究の諸相
三 ヘーゲル法哲学からの離陸

第二章 唯物史観としての国家観の形成
一 マルクスのフランス国家考と〝国家批判プラン〟
二 エンゲルスのイギリス国家考
三 『ドイツ・イデオロギー』における国家論
四 唯物史観としての国家観の展開

第三章 『資本論』における国家と法
一 ベンサムとヘーゲル
二 国家と法 社会規範と法規範
三 所有イデオロギー批判の方法的論理

第四章 マルクス、エンゲルスのイギリス国家論
一 ブルジョア国家の成立と展開
二 ブルジョア国家の確立と成熟
三 イギリス国家構造の理論的分析

第五章 マルクスの第二帝制・ボナパルティズム論
一 革命の幻想とルイ・ナポレオン支配体制論
二 フランス現状分析論の転換
三 第二帝制・ボナパルティズム論の到達
四 残されている問題

第六章 マルクス、エンゲルスのドイツ国家論
一 革命と反革命の構図とその修正
二 ドイツ・ボナパルティズム論の展開
三 上からの革命の概念的把握
四 ドイツ・ブルジョア国家形成の特質について

第七章 後期エンゲルスの国家論
一 ボナパルティズム論
二 国家論の方法
三 国家一般論

あとがき


著者紹介

大藪龍介(おおやぶ・りゅうすけ)  元福岡教育大学教授
1938年 福岡県三潴郡大木町生まれ
1961年 九州大学法学部卒業
1970年 九州大学大学院法学研究科単位取得退学

単著
『マルクス、エンゲルスの国家論』、現代思潮社、1978年(2024年復刊 本書)
『近代国家の起源と構造』、論創社、1983年
『現代の国家論 レーニン,パシュカーニス,グラムシ,そして"国家論ルネサンス"』、世界書院、1989年
『国家と民主主義 ポスト・マルクスの政治理論』、社会評論社、1992年
『マルクス社会主義像の転換』、御茶の水書房、1996年
『マルクス派の革命論・再読』、社会評論社、2002年
『明治維新の新考察 上からのブルジョア革命をめぐって』、社会評論社、2006年
『明治国家論 近代日本政治体制の原構造』、社会評論社、2010年
『国家とは何か 議会制民主主義国家本質論綱要』、御茶の水書房、2013年
『日本のファシズム 昭和戦争期の国家体制をめぐって』、社会評論社、2020年
『マルクス主義理論のパラダイム転換へ マルクス・エンゲルス・レーニン国家論の超克』、明石書店、2020年
 
 
共編著
『社会主義像の展相』、加藤哲郎、松富弘志、村岡到共編、世界書院、1993年
『エンゲルスと現代』、杉原四郎、降旗節雄共編、御茶の水書房、1995年
『マルクス・カテゴリー事典』、石井伸男、伊藤誠、田畑稔、正木八郎、渡辺憲正共編、青木書店、1998年
『20世紀社会主義の意味を問う』、社会主義理論学会編、御茶の水書房、1998年
『新左翼運動40年の光と影』、渡辺一衛、塩川喜信共編、新泉社、1999年
『アソシエーション革命へ』、田畑稔、白川真澄、松田博共編、社会評論社、2003年
『21世紀のマルクス』、伊藤誠、田畑稔共編、新泉社、2019年

著者ホームページ マルクス主義理論のパラダイム転換を目指して
https://www5d.biglobe.ne.jp/~oyabu/

2024年5月24日刊行予定
マルクス、エンゲルスの国家論
大藪龍介/著
定価=本体2400円+税 ISBN978-4-7845-2805-9 A5判上製316頁

投稿者: 社会評論社 サイト

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