1995 年から2007 年にかけて、ドイツ三大信用銀行のナチス期の業務をめぐる調査と研究が国際的・飛躍的に進展した。
西ドイツの産業企業は1980 年代後半に、すでに第二次世界大戦中に行われたユダヤ人に対する強制労働の問題に対処しており、ダイムラーベンツ社はユダヤ人協会への賠償金支払いを行い、フォルクスワーゲン社と総合電機シーメンスも救済基金を設置し、強制労働への補償に取り組んだ。
他方、ドイツの銀行業界は産業企業と比べ対応に遅れを取っていたが、1990 年代後半にスイスとアメリカで生じたユダヤ人の休眠口座や資産返還問題に対する批判に晒された段階で、本格的対応を迫られることになった。
ドイツ銀行取締役会は1997 年に歴史検証委員会を立ち上げ、調査研究を諸大学の研究者に委託した。またコメルツ銀行とドレスデン銀行もこれに続いた。
こうした中、若手を含む多くの研究者たちがこの課題に取り組み成果が出され戦時業務責任をめぐる国際的論争が生じた。本書はその詳細な調査・研究の記録。
主要目次
序章 ナチス体制下のドイツ三大信用銀行
─21世紀への転換期における調査と研究
第1部 H.ジェイムズのユダヤ系資産「アーリア化」に関する研究
第2部 L.ガル著『銀行家アプス伝』におけるアプス研究
─諸アプス批判への反省
第3部 ナチス体制下のドレスデン銀行
─K.-D.ヘンケ編『「第三帝国」におけるドレスデン銀行』の調査と研究
第4部 ナチス体制下のコメルツ銀行
─フンボルト大学現代史研究所の調査報告書
終章 日独の企業史・銀行史における本書テーマの取り扱い比較
著者:山口博教 ヤマグチヒロノリ
北星学園大学名誉教授
A5判 上製 383頁 本体価格3700円+税
ISBN 978-4-7845-2817-2