|叢書・いのちの民俗学2| 長寿 団子・赤飯・長寿銭/あやかりの習俗 板橋春夫/著

銭と食べ物にこめた、長寿へのあやかり。儀礼習俗の採集で、現代社会を縮図する。

第1部 人生儀礼

いのちの実感〜自宅から離れる誕生と死/人生儀礼研究の現在〜伝統と現代を語るために

第2部 いのちの民俗誌

群馬県館林市上三林、下三林地区における誕生と死についての聞き書きから

第3部 長寿と食物

五十五の団子考/葬儀と食物/長寿銭の民俗

コラム ポックリ信仰/隠居と定年/老いの自覚

★用語索引付き


エッセンス


【第1部 いのちの実感】
民俗学は、身近な生活文化の疑問を解く学問である。人々は普段の何気ない行為やしぐさが、実は大変深い意味があることを知ると一様に驚く。
第1章の「誕生と死の現在」では、私が生まれ育った地域に伝承された誕生と死に関する伝承の数々を紹介し、その意義にも触れる。私自身が事例の一つとなっているのは愛嬌である。誕生と死にみる共通点は「病院」である。そして、誕生も死も「座」から「寝」へという象徴的な変化をみせており、詳細は第一部をご一読いただきたい。
人がこの世に生まれ、亡くなるまでには、さまざまな儀礼や習わしが行われるが、連綿と続けられた儀礼・習俗にはそれなりの意味があることに思い至らねばならない。どの学問でも同じであろうが、先輩がどのような成果を持ち、仲間がどのような研究を発表しているか、常に先行研究を踏まえ、関連する研究に目配りをしておくことは必須である。「研究動向」にはいつも敏感でなければならない。第2章「人生儀礼研究の現在」は、民俗学界における人生儀礼研究の研究動向を把握し、関心のある分野についてさらに学びを深めるための文献案内の役目を果たす。

【第2部 いのちの民俗誌】
「いのちの民俗誌」は、筑波大学に提出した博士論文の一部である。論文は三部構成であり、第一部と第二部は『誕生と死の民俗学』として出版された。しかし第三部は事例研究であり、ボリュームもあったので一書に納められなかった。今回加筆修正し、本書に収録したので、どなたにも読んでいただけるようになった。
博士論文というと堅苦しく難解という先入観があるが、本書に収録した「いのちの民俗誌」は、ライフヒストリー的手法を採用しながら二〇人以上の方々からの聞き書きを再構成したもので、身近な生活伝承に満ちあふれている。豊富すぎる事例のために読み疲れるかもしれないが、私が事例をどのように読み取り、分析していったかという研究プロセスを示したので、研究法を学ぶことも可能であると思う。

【第3部 あやかりの習俗】
第1章「五十五の団子考」は、数え五十五歳で団子を食べる習俗の研究である。五十五の団子という局地的分布を示す民俗事例について考察を進めるために、厄年と長寿儀礼の関連から問題点を探った。年齢や定年などを考える場合に大変興味深い事例であり、あわせて長寿とは何かを考えさせてくれた。
第2章「葬式と赤飯」は、全国に分布する葬式における赤飯の使用例の紹介と分析である。葬式に赤飯を出す、と聞いて常識を疑う人が大勢いるだろう。しかし、葬式に赤飯を用いる地方は意外と多いのである。常識と民俗慣行の関連を考える際の面白いテーマであり、ハレとケガレの問題を考える上でも重要な習俗である。
第3章「長寿銭の習俗」は、葬式に参列した際に紅白のポチ袋をもらって、どうすべきかと悩んだのが研究の契機である。長寿銭は新しい習俗であり、現代の高齢社会を象徴する習俗でもある。長寿銭に関する民俗研究は、身近な疑問解決に役立つ民俗学の実践である。


四六判並製272頁 定価=本体2000円+税 ISBN978-4-7845-0799-3


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投稿者: 社会評論社 サイト

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