野添憲治著作集 シリーズ・花岡事件の人たち(関連書籍) 社会評論社

わたしはそれまで、軍国少年であったことは認めるが、戦争に直接手をくだした加害者ではないと思っていた。しかし、花岡事件を知って中国人たちを痛めつけている自分を見つけて愕然とした。わたしも加担した花岡事件を詳しく知りたいと思ったが、当時は本も手に入らなかった。花岡鉱山に行くと話を聞いて歩いたが、「花岡事件」というだけで戸をしめられた。花岡鉱山では触れてはならない禁句になっていたが、地元の人たちに聞くより方法を持たないわたしは、戸をしめられ、睨みつけられても話を聞きに通うようになった。花岡事件とわたしのつながりはここからはじまったが、その後は中国人強制連行や朝鮮人強制連行にも手を拡げたものの、いまもこの作業を続けている。

(シリーズ刊行にあたって リーフレットより 2007年)

2007〜2008年刊 各巻A5判上製、在庫僅少、4300円+税

第1集 強制連行

取材40年、歴史的証言集
中国人蜂起が問う戦争責任

概説・日本の中国侵略と花岡事件
花岡鉱山の発展 時代背景 労工狩りと収容所
連行過程 強制労働の実状 さらなる連行の犠牲者
花岡事件起こる 敗戦後の過程 大館市での慰霊式と鹿島建設への公開書簡
「和解」の認識 近年の動向

版画 「秋田物語」ノート(1)

第一部 花岡事件の人たち
はじめに
中国人強制連行とは
中国から花岡鉱山へ
過酷な労働の中で
蜂起する中国人
戦後の日本で生きる
花岡事件から引き継ぐもの
付記①  付記②

第二部 花岡事件を見た二〇人の証言(前編)
付記 証言集について
ンゴーラ!  鹿島組の通訳として
ウジと栄養失調の中で  中国人の看護にあたる
クーニャンをよこせ  救護班として花岡へ
アメリカの事件調査  進駐軍先遣隊渉外係として
帰国できなかった陳さん  中国人を看護した日赤生徒
花岡鉱山の中国人を診察 医師として
中山寮の事務員  ダムの底に沈んだ中山寮
裸足で働かされた中国人  なんであんなに中国人を叩くのか
サイレンが鳴り半鐘が叩かれる  忘れらないその夜のこと
ごまかしの食料  鹿島組の事務員として

第2集 蜂起戦後

尊厳をかけた中国人蜂起
強制連行と地獄の鉱山労働

版画 「秋田物語」ノート(2)

第一部 大隊長耿諄の蜂起
序 章 四二年目の「花岡事件」
第一章 国民党の将校で捕虜に
第二章 花岡鉱山で地獄の日々
第三章 蜂起「花岡事件」
第四章 横浜裁判の途中で帰国

第二部 劉連仁穴の中の戦後
第一章 雪の当別山中で発見
第二章 身重の妻とひきはなし強制連行
第三章 昭和鉱業所で地獄の労働
第四章 「穴」から見た日本の戦後
第五章 日本政府に謝罪と補償を要求
第六章 帰国
終 章 再び日本へ

 

第3集 花岡鉱山

軍事工場としての花岡鉱山
総力戦体制下の企業の実態

版画 「秋田物語」ノート(3)

第一部 聞き書き花岡事件 三七年目の証言
はじめに
連行そして寮へ
中山寮生活
地獄の日々
過程と背景
内地移入計画と戦時中の花岡
残虐行為の生み出したもの
蜂起前夜
一斉蜂起
事件処理

第二部 花岡鉱山
花岡鉱山の労務の変遷
花岡鉱山の友子制度

第三部 花岡事件を見た二〇人の証言(後編)
付記 証言集について
毎日のように人が死ぬ  鹿島組職員の見た事件
骨と皮ばかりになって  花岡在住者の見た暴動
拷問と報道管制  憲兵隊兵長として出動
抵抗しなかった中国人  山狩りに消防団員として参加
C級戦犯  警官として出動
殺されるがら山さ行ぐな 少年の見た花岡の中国人
葉っぱを食べる  引き揚げ女性の見た中国人
人間のニシン漬け  遺骨の発掘に参加
遺骨送還に参加  周総理と会見
戦争さえなければ  花岡町で生れ育って

第4集 戦争責任

放置された戦時下の蛮行
国家・企業・地域の戦後責任

中国への旅─取材写真から

版画 「秋田物語」ノート(4)

第一部 事件を刻む
鹿島建設社史のなかで花岡事件はどう扱われているか
〈対談〉際限のない営みのなかで
『花岡ものがたり』幻の版木を発見
四二年目の「花岡事件」
中国への旅 花岡事件の生存者・遺族をたずねて
時代の闇を突くまなざし
「花岡事件」を刻んだ画家
中国を歩く 中国人強制連行を追って
李振平さんをしのぶ
花岡事件と「日の丸・君が代」天皇制
八月一五日まで

第二部 花岡事件・中国人強制連行関係文献目録


関連書


企業の戦争責任
中国人強制連行の現場から

2009年刊
アジア太平洋戦争における企業の実態とその戦争責任を問う
炭鉱、金属鉱山、軍事工場、土木、建設、港湾荷役など、中国人が強制労働させられた北海道から九州まで135事業所の現場を訪ねる「慰霊と取材の」の旅の記録。
四六判上製 本体2700円+税

 

遺骨は叫ぶ
朝鮮人強制労働の現場を歩く

2010年刊
地底からの呻き声に耳を傾ける
骨の主の名前はわからないし、どんな殺され方をして埋められたのかもわからない。骨は何も語ってはくれない。だが、朝鮮人を日本に連行し、過酷な労働をさせられて死んだり、また日本人に殺された人たちのことは、そのもの言わぬ骨に聞いて語ってもらうことが、日本政府や私たち日本人に求められているのではないだろうか。
四六判上製 本体1900円+税