|刊行情報| ウクライナ3.0 米国・NATOの代理戦争の裏側  塩原俊彦/著

ウクライナ戦争はなぜ引き起こされたのか—。前著『プーチン3.0 殺戮と破壊への衝動』に続き問題の本質に迫る論考!

*「はじめに」より抜粋

いま、世界中は集団的ヒステリーと言える状況にある。ウクライナ戦争の実態を伝える映像は人々の心を揺さぶっている。こうしたなかで、冷静な議論を求めても難しいかもしれない。それでも、ぼくは『プーチン3.0』を上梓し、今度は『ウクライナ3.0』を書き上げた。

拙著『プーチン3.0』はウクライナ戦争をロシアに焦点を当てて論じたものであった。本書『ウクライナ3.0』はウクライナにスポットを当てながら、ウクライナ戦争の本質に迫ろうとしている。過去に、『ウクライナ・ゲート』および『ウクライナ2.0』を刊行した者として、『ウクライナ3.0』を書くことはいわば義務のようなものであった。ウクライナ政府がヴァージョンアップしたわけではないが、ロシアによる軍事侵攻にあった当事国という、これまでとは異なる新しい段階にあるウクライナを論じるに際して『ウクライナ3.0』というタイトルをつけることにしたものだ。

この2冊を書くにあたって心にあったのは、「無知」に対する責任を呼び起こそうという使命感といったものだった。感情論が先走ってしまっている状況下では、こんな使命感は何の役にも立たないかもしれないが、よく似た状況であっても、しっかりした視線から言葉を発した人物に励まされて、ぼくは著述をつづけてきたことになる。その人の名は、伊丹万作である。彼の書いた『戦争責任者の問題』をぜひ読んでほしい。

ぼくはこの著作を読んで、海に囲まれて能天気に過ごしてきた日本人の精神性が基本的にまったく変わっていないことに気づいた。第二次世界大戦で敗れた日本では、映画監督伊丹のいた映画界にあっても、戦争責任者を特定し、追放するといった議論がさかんに行われていた。当時、「多くの人が、今度の戦争でだまされていたという」風潮が広がっていたのだが、伊丹はこうした当時の世相に対して、辛辣な批判をこの本のなかで書いている。

おそらく、「批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになってしまっていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである」という彼の指摘は、現在の日本全体にもあてはまっているように思われる。それゆえに、いまでもマスメディアの情報操作に惑わされて、ウクライナ戦争の本質に迫れない人ばかりが目立つのだ。

だからこそ、「だまされるような脆弱な自分というものを解剖し、分析し、徹底的に自己を改造する努力を始める」ことが21世紀のいまもなお求められている、とつくづく思う。ゆえに、「勉強しろ」と『プーチン3.0』にも書いておいたわけだ。

日本国内では、依然として感情的な議論が多くみられるなかで、本書は『プーチン3.0』と同じく、徹底した中立性をめざしつつ、透徹した分析を心がけるという努力に基づいて書かれたものである。といっても、「現実」がどんどん変化している以上、その「現実」の背後にある「真実」に迫るのはきわめて困難な作業であった。

ここまで分析してはじめて、サブタイトルを「米国・NATOの代理戦争の裏側」とすることに決めた。読者はこの副題を頭のどこかにとどめながら、本書を読み進めてほしい。分析の視角を忘れないためである。

本書は電子、紙媒体ともに同時発売される。『プーチン3.0』と同じく、本書においてもURLを多用している(電子版では下線部をクリックしてほしい)。


はじめに

第一章 ウクライナ戦争は長期化
1.戦争継続という選択
2.ゼレンスキー政権の内幕
3.ロシアはウクライナの東部を併合か
4.ウクライナ経済

第二章 2014年のウクライナ危機以降の内政
1.ナショナリスト煽動による米国の誤算
2.オリガルヒ、ポロシェンコの正体
3.ゼレンスキー政権の誕生と変質

第三章 ドンバス和平交渉
1.ドンバス和平の変遷
2.2021年のドンバス情勢
3. なぜ国連平和維持軍を派遣できなかったのか

第四章 ウクライナの重大課題
1.欧州へのガス供給問題
2.サイバー攻撃
3.言語問題:国家語とナショナリズム
4.すさまじいマニピュレーションという現実

第五章 ウクライナ戦争の消耗戦化と遠い復興
1.なぜ戦争を止められないのか
2.復興をめぐって
3.結びにかえて

塩原俊彦 しおばら・としひこ 評論家 1956年生まれ。ソ連・ロシア経済政策専攻。学術博士。著書に『ロシア経済の真実』(東洋経済新報社)『ビジネス・エシックス』(講談社)『ロシアの軍需産業』(岩波書店)など多数ある。

2022年7月22日刊
ウクライナ3.0 米国・NATOの代理戦争の裏側
塩原俊彦/著
定価=本体1800円+税 ISBN978-4-7845-1379-6 A5判並製160頁
(本書は電子書籍・Kindle版もリリースいたします)

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