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図書新聞 2020年7月11日号掲載 川崎賢子氏(立教大学特任教授)書評「読みの熱量と強度には圧倒されずにいられない 混迷の時期にこそ、本格的な批評研究が指針となる」
1914年に小林一三によって創立された宝塚少女歌劇団。宝塚が世紀を越えて存続したのは演者〈スター〉が演じる芝居〈ドラマ〉が、それも男役スターに当て書きする新作が上演され続けてきたからだ。本書は21世紀に登場した新作の演出家とスターを検証し、100年を越す〈宝塚の謎〉を解く。
第一部 〈悲劇〉を解読する
(執筆 関谷由美子)
第一章 新興国アメリカ、ニュー・エイジの闘い
小池修一郎脚本・演出 月組「グレート・ギャツビー」(F・スコット・フィッツジェラルド作”The Great Gatsby”(Gatsby)より)─ フラッパーの時代
小池修一郎脚本・演出 宙組「NEVER SAY GOODBYE ある愛の軌跡」─ デラシネから戦士へ
第二章 〈失われた王国〉の物語
生田大和脚本・演出 月組「春の雪」(三島由紀夫著「春の雪」『豊穣の海』第一巻 より)─〈成熟拒否〉の構造
上田久美子脚本・演出 月組「月雲の皇子─衣通姫伝説より」─ どのように語るのか、物語が創られる
上田久美子作・演出 花組「金色の砂漠」─〈局外〉への意志
第三章 〈天才〉の悲劇
原田諒脚本・演出 雪組「ニジンスキー─奇跡の舞神─」 ─ 時代の転換期を生きる
第四章 〈永遠〉を生きる
木村信司脚本・演出 花組「不滅の棘」(カレル・チャペック原作『マクロプロス事件』 より)─〈期間としての人間〉であることへのオマージュ
小池修一郎脚本・演出 花組「ポーの一族」(原作 萩尾望都『ポーの一族』小学館 フラワーコミックス)─ 気配のロマネスク
第二部 宝塚の華 〈男役〉
(執筆 鈴木国男)
第一章 春日野八千代から轟悠へ
第二章 二十一世紀のトップスター
男役へのアプローチ
第三部 宝塚 〈美〉の中の〈思想〉
(執筆 井上理惠)
第一章 女性作家たちの劇世界
植田景子の挑戦(「THE LAST PARTY~S・Fitzgerald’s last day~フィッツジェラルド最後の一日」/「クラシコ・イタリアーノ」二〇一一)
小柳奈穂子のコメディ(「めぐり会いは再び」二〇一一/「ルパン三世――王妃の首飾りを追え!」二〇一五)
上田久美子の問いかけ(「翼ある人々――ブラームスとクララ・シューマン」/「神々の土地~ロマノフたちの黄昏~」)
第二章 男性作家たちの劇世界
大野拓史と〝真っ直ぐな男〟(「一夢庵風流記 前田慶次」(原作隆慶一郎『一夢庵風流記』)二〇一四)
原田諒と内なる神(「MESSIAH――異聞・天草四郎――」二〇一八)
生田大和とコメディ(「CASANOVAカサノヴァ」)
資料・上演年表(2000~2019)
(作成 松本俊樹)
井上理惠(いのうえよしえ)桐朋学園芸術短期大学特別招聘教授。著書:『菊田一夫の仕事―浅草・日比谷・宝塚』『川上音二郎と貞奴』(全3巻)など。 鈴木国男(すずきくにお)共立女子大学文芸学部教授。共著:『ベストプレイズⅡ』『戦後ミュージカルの展開』など。 関谷由美子(せきやゆみこ)大東文化大学人文科学研究所。著書:『藤村・漱石<主人公>の影』『<磁場>の漱石―時計はいつも狂っている』など。 松本俊樹 大阪大学文学研究科演劇学研究室コースアシスタント
定価=本体3800円+税 ISBN978-4-7845-1145-7 A5判並製344頁
2020年4月中旬発売予定
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