|刊行情報| 中国の現代化を担った日本 消し去られた日本企業の役割 西原哲也/著

半世紀たった今、甦る日中国交回復の舞台裏

建国後孤立していた中国の現代化に、日本人や日本企業はどう関わってきたのか。日本企業による奮闘の痕跡を、聞き取り調査した第一級の資料。中国ビジネス担当者、中国研究者必読。(『覚醒中国 秘められた日本企業史』2012年刊改訂保存版)


本書内容

第1章 中国を眠りから覚ました日本人

第2章 長崎国旗事件と稲山嘉寛の訪中

第3章 友好貿易の始まり

第4章 高碕達之助とLT貿易

第5章 プラント輸出と吉田書簡

第6章 文革と友好商社

第7章 周四条件と三菱グループ

第8章 伊藤忠・住商・丸紅の中国復帰工作

第9章 三菱重工の方針転換

第10章 国交正常化という「儀式」

第11章 江南造船と日本の技術

跋文(宮内雄史)
日中間の経済・企業関係史年表


 「はじめに」抜粋 

二〇二一年にインターネットのある動画サイトで、二十代の中国人青年が日本についての印象を吐露した動画を見たことがある。中国では日本の技術力が高いというイメージは確かにあるが、彼はその日本の技術力が「欧米の真似をして得たものに過ぎない」という感想を語っていた。

彼は話した。「戦後は日本全体がボロボロの状態で先進国を呼ぶには程遠かったが、それに手を差し伸べた米国の支援のおかげで、先進国になれたのだ。他人の技術を真似した人のことを優秀とは言えない」。「その点、我が国中国はどうだ。中国も戦後の貧しさは同じだったが、インフラ施設も、鉄道も、自動車産業も、中国独自の技術開発を進めてここまできた。積極的に海外のインフラ支援をするほどまでに発展している」——。

これにはいささか衝撃を受けたものだった。中国人の若い世代は、中国の発展は日本や欧米諸国の支援とは無縁に、独自になされてきたという教育や宣伝を受けているのだろう。

また、その十年以上前の二〇〇八年一二月には、中国の改革開放三〇周年を機に、中国メディアの「経済参考報」などが、「改革開放三〇周年で中国に最も貢献した外資企業一〇社」のネット投票を実施したことがある。

その結果は興味深いものだった。日本企業で一〇位以内に選ばれたのは、ソニーの一社だけだったことだ。ソニーが改革開放の初期から先駆けて対中投資してきたということはなく、これは現代的な企業イメージが先行したものに過ぎないだろう。

こうした中国人の、一般的な意識については殊更大騒ぎすることではないが、少なくとも「改革開放以来中国に貢献した外資企業」という存在は、イメージ先行程度に意義が薄れてしまったことを示している。だが少なくとも、その時点では、中国人の間で「改革開放以来、中国に貢献した外資企業」という存在を意識させていたことは確かである。

それがここ十年の間に、「中国に貢献した外国企業」という視点どころか、先の若者の感想のような、独自発展史観が当然の史実として置き換えられてしまっているのだろうかと、愕然としたものである。

二〇二二年は、日中国交正常化五〇周年の年である。草創期の中国に莫大な技術を提供し、現在の巨大な経済力の礎を築いたのは、多くの日本の企業や経済人だったが、中国ではそれが語られることはもはやない。経済力で日本を追い越した中国が日本企業の貢献を記憶から消し去るというなら、こちらは、中国の発展を担ってきた日本企業の史実を語り継いでいくしかない、と思ったのが本書の趣旨である。

西原哲也作画より
西原哲也作画より

著者 西原哲也(Nishihara Tetsuya)
1968年長野県須坂市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、時事通信社入社。徳島支局、外国経済部記者を経て、香港大学大学院アジア研究修士課程(MAAS)修了。2001年に共同通信グループNNA入社。中国総合版編集長などを経て、現在NNAオーストラリア代表取締役。主な著書に「李嘉誠・香港財閥の興亡」(NNA)、「オーストラリアはいかにして中国を黙らせたのか」(徳間書店)など。

2022年1月14日刊
中国の現代化を担った日本 消し去られた日本企業の役割
西原哲也/著
定価=本体1800円+税 ISBN978-4-7845-1885-2 四六判並製328頁


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投稿者: 社会評論社 サイト

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