竹内康人著『日本陸軍のアジア空襲』目次・概要の紹介

竹内康人著『日本陸軍のアジア空襲 爆撃・毒ガス・ペスト』が発売になりました。「日本陸軍によるアジアでの空襲・爆撃についての認識が深まるとともに人権と平和にむけての活動がすすむことを願う」──日本がアジアで行った加害の歴史の知識を深めるための記録です。今回は目次と各章の概要をご紹介します。


◎中日新聞(静岡版)2017年8月11日付けに本書と著者の紹介記事が載りました!「アジア空襲 加害の歴史に目を向けて ◆県近代史研究会・竹内さん 実態浮き彫りに」



日本陸軍のアジア空襲 爆撃・毒ガス・ペスト*目次


はじめに

第一章 満洲侵略と浜松からの派兵
1 浜松から飛行第七大隊第三中隊、満洲へ
2 飛行第十二大隊の編成と抗日軍への攻撃
3 熱河侵略と飛行第十二大隊
4 飛行第十二戦隊、アジアへ

第二章 満洲侵略と平壌の陸軍飛行第六連隊
1 平壌から独立飛行第八中隊、満洲へ
2 昂昂溪の戦闘と独立飛行第八中隊
3 飛行第六連隊第一中隊の東辺道攻撃
4 航空部隊による軍事演習

第三章 陸軍航空爆撃隊、浜松からアジア各地へ
1 飛行第十二戦隊・飛行第十六戦隊
2 飛行第六〇戦隊
3 飛行第九八戦隊
4 飛行第十四戦隊
5 飛行第三一戦隊
6 飛行第七戦隊・浜松教導飛行師団
7 飛行第六一戦隊・飛行第六二戦隊
8 シンガポール・ビルマ爆撃

第四章 陸軍航空爆撃隊による中国爆撃
1 河北省 天津・景県、山西省
2 陜西省 西安・延安・宝鶏・潼関・安康・漢中
3 甘粛省 蘭州、四川省 重慶・梁山・成都
4 河南省 信陽、湖南省 平江・衡陽
5 浙江省 金華・衢県、福建省 建甌
6 雲南省 昆明・保山
7 重慶爆撃被害の証言

第五章 浜松陸軍飛行学校と航空毒ガス戦
1 陸軍飛行第七連隊の設立と毒ガス戦研究
2 浜松陸軍飛行学校の毒ガス戦研究
3 飛行第七連隊と浜松陸軍飛行学校の拡張
4 満洲でのイペリット雨下訓練
5 中国戦線での航空毒ガス戦
6 三方原教導飛行団の設立
7 敗戦と戦争犯罪の隠蔽

第六章 下志津陸軍飛行学校の毒ガス戦研究演習
1 航空化学戦の研究経過・一九三六年度
2 航空化学戦の研究計画・一九三七年度
3 下志津での毒ガス防護研究演習
4 三方原爆撃場でのガス爆撃・防護研究
5 ハイラルでの毒ガス雨下演習
6 チチハル飛行場と毒ガス集積

第七章 防疫給水部隊と細菌戦・ペストノミ
1 関東軍防疫給水部・七三一部隊跡
2 関東軍軍馬防疫廠・一〇〇部隊跡
3 航空機による細菌戦・ペストノミ撤布
4 南方での細菌戦部隊の展開

おわりに


 各章の構成(「はじめに」から抜粋)


最初に、満洲への侵略戦争で浜松から派兵された飛行第七大隊第三中隊(のちの飛行第十二大隊)と平壌の飛行第六連隊の動きをみる。続いて、中国での全面戦争にともなう浜松を起点とする爆撃部隊による中国と東南アジアでの爆撃の状況をみる。そして、航空機を使用しての毒ガス兵器と細菌兵器の使用についてみていく。

各章の主な内容は以下である。

第一章は、満洲侵略戦争に際し、浜松の陸軍飛行第七連隊から派兵された飛行第七大隊第三中隊(飛行第十二大隊)の動向について記した。飛行第七大隊第三中隊は満洲各地の抗日部隊を爆撃し、熱河への侵略にも動員された。現地で飛行第十二大隊となり、その後、飛行第十二連隊となった。中国への全面戦争がはじめられると中国各地を爆撃し、さらに南方へと動員された。

第二章は、満洲侵略戦争での陸軍飛行第六連隊の動向をまとめたものである。満洲侵略にともない、平壌の飛行第六連隊から独立飛行第八中隊・第九中隊・第十中隊が編成され、派兵された。独立飛行第八中隊はチチハル攻略戦をはじめ、満洲各地の戦闘に加わった。また、満洲・朝鮮国境で抗日軍の活動が盛んになると、飛行第六連隊は抗日軍が活動していた東辺道各地を攻撃した。

第三章は、浜松の陸軍航空基地から派兵された爆撃隊が派兵先で強化され、中国をはじめアジア各地を爆撃した経過をまとめたものである。順に、飛行第十二戦隊・飛行第十六戦隊、飛行第六〇戦隊、飛行第九八戦隊、飛行第十四戦隊、飛行第三一戦隊、飛行第七戦隊、浜松教導飛行師団、飛行第六一戦隊、飛行第六二戦隊について記した。また、シンガポール、ビルマなどでの爆撃の状況についてまとめた。

第四章は、陸軍航空爆撃隊による中国都市への爆撃の状況と被害の実態を記したものである。順に、河北省の天津・景県、山西省、陜西省の西安・延安・宝鶏・潼関・安康・漢中、甘粛省の蘭州、四川省の重慶・梁山・成都、河南省の信陽、湖南省の平江・衡陽、浙江省の金華・衢県、福建省の建甌、雲南省の昆明・保山について記した。日本と中国の資料を照合し、爆撃と被害の実態を示した。

第五章は、静岡県の浜松陸軍飛行学校が関わった毒ガス兵器の開発・研究・訓練と日本軍による中国での飛行機による毒ガスの使用について記した。また、浜松での軍事基地の拡張の実態を基地拡張工事の図面などを利用して記した。さらに浜松の三方原飛行場に置かれた航空毒ガス戦部隊である三方原教導飛行団と敗戦にともなう毒ガス兵器の隠蔽について記した。

第六章は、千葉県の下志津陸軍飛行学校による一九三六年から一九三七年にかけての毒ガス戦の研究・演習について、下志津での毒ガス防護研究演習、浜松の三方原爆撃場でのガス爆撃・防護研究を中心に記した。また、満洲のハイラルでの毒ガス雨下演習やチチハルへの毒ガス集積、遺棄毒ガスが発見されたチチハル飛行場跡地の状況について記した。

第七章は、関東軍防疫給水部(七三一部隊)による細菌戦について、七三一部隊跡、関東軍軍馬防疫廠(一〇〇部隊)跡、航空機によるペストノミの撒布などの細菌戦の実行、南方での防疫給水部隊の動向について記した。ここでは、七三一部隊で開発された細菌兵器が飛行機によるペストノミの撒布のかたちで使用されたこと、南方軍防疫給水部がペストノミを生産したこと、ペスト防疫の名で村落を焼却したことなどを記した。


日本陸軍のアジア空襲
爆撃・毒ガス・ペスト

竹内康人/著

A5判並製・263ページ 定価=本隊2,500円+税

日本陸軍航空部隊は、アジア・太平洋戦争の期間を通じて、中国、マレー、シンガポール、フィリピン、ビルマ、インドネシアに派遣され、無差別戦略爆撃を繰り返し、また航空部隊による毒ガスや細菌兵器の散布をおこなった。その歴史的全容を明らかにする研究。

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||冒頭&目次詳細|| 『明治日本の産業革命遺産・強制労働Q&A 』竹内 康人/著

投稿者: 社会評論社 サイト

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