|刊行情報| 歴史の証言 前に進むための記録と言葉(日韓記者・市民セミナー ブックレット 8)

歴史は「現在と過去との対話」と言われ、人々が重ねてきた地層にも例えられる。現在に生きる私たちは、その過去と対話し主体的に捉えてこそ、未来に向かって進むことができる。

第 Ⅰ 講で紹介される信濃毎日新聞の特集と、そこから生まれた5つの提言は、誠実に歴史に向き合うことの大切さを私たちに教えている。その意味で、姜徳相著『関東大震災』復刻と、呉徳洙監督の映画『在日』は、前に向かって進むための、かけがえのない歴史記録である。

第Ⅰ講 「記憶を拓く─信州・半島・世界」 足元から、「国」の枠を超えて考える日韓
田中陽介(信濃毎日新聞報道部デスク)

第Ⅱ講 姜徳相著『関東大震災』復刻出版の意義
高二三(新幹社社長)

第Ⅲ講 映画『在日』上映と呉徳洙監督を語る
(金昌寛、辛仁夏、裵哲恩、清水千恵子)


第Ⅰ講 「記憶を拓く─信州・半島・世界」 足元から、「国」の枠を超えて考える日韓 
信濃毎日新聞の田中陽介報道部デスクは新聞の役割について「自国の代表のような顔をして他国を非難することでもなければ、問題を脇においてただ仲良くしましょうと呼びかけることでもない。大事なのは物事の知られざる側面、忘れ去られた一面を多角的に伝え、相互理解と対話をどう促していくか、その土台をつくること」だと語っています。

第Ⅱ講 姜徳相著『関東大震災』復刻出版の意義
在日の歴史家・姜徳相氏が『関東大震災』を発行したのが一九七五年。二十二年後の九七年に絶版になりました。出版元の中央公論社を買い取ったのが読売新聞社で、同社の神様のような存在であった人物は過去に朝鮮総督府の役人として三・一独立運動を力で抑え込み、その功あって警察官僚に就いた経歴の持ち主です。そこに起きたのが関東大震災でした。

震災時に彼がとった行動と絶版との因果関係を踏まえ、復刻版を出版した在日二世の高二三社長は「関東大震災直後の戒厳令下で、朝鮮人が憎いからといって自警団が勝手に殺すことはできない。軍隊や警察がバックアップしたからこそ大虐殺が起きた。現在のヘイトスピーチの根源がここにある」と警鐘を鳴らしています。

第Ⅲ講 映画『在日』上映と呉徳洙監督を語る
戦後五〇年の在日の歩みを記録した映画『在日』。スタッフの一人だった清水千恵子さんは、「解放から五〇年、在日は営々とこの日本社会で生き続けてきた。闘い、敗れ、苦しみ、喜び、泣き、笑いながらこの五〇年を生き続けてきた。多くの在日の生きざまに思いを寄せながら映像で作りたい」との呉徳洙監督が制作を決意した言葉を紹介しています。


2022年7月15日刊
歴史の証言 前に進むための記録と言葉 日韓記者・市民セミナー ブックレット8
裵哲恩/編 田中陽介、高二三、金昌寛、辛仁夏、裵哲恩、清水千恵子著
定価=本体900円+税 ISBN978-4-7845-1158-7 A5判並製96頁


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投稿者: 社会評論社 サイト

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