|刊行情報| 学問の自由と自由の危機 日本学術会議問題と大学問題 寄川条路 /編

日本学術会議の誕生の原点に遡り、現代的意義と政府による会員任命拒否問題の深淵を探る。

「学問の自由」に潜む危機を国立大学と私立大学の現実問題から捉えた論集。「学問の自由」シリーズ第6弾。

目次
第1章 戦前日本の学術体制と日本学術会議の誕生──「学問の自由」の現代的意義に関わって

第2章 「学問の自由」の論じ方──日本学術会議会員任命拒否問題を契機として

第3章 日本学術会議の会員任命の拒否問題についての法的考察

第4章 筑波大学における学問の自由と自由の危機

第5章 明治学院大学における学問の自由と自由の危機


*本書「まえがき」より

第一章は、「学問の自由」の現代的意義に関わって、なぜ日本学術会議が誕生したのかを原点に遡って考える。そのために、戦前の学術体制の概略と経過をたどり、その批判と反省の下に成立した日本学術会議の経緯と設立理念を概観し、政府の政策転換による学術会議の地位の変化について触れ、現在に続く問題への橋渡しとする。それらを踏まえて「学問の自由」の成り立ちと現代的意義に言及する。

第二章は、「国民の理解と支持」という観点から、日本学術会議会員の任命拒否問題を論じる。日本学術会議は「国民との対話」の重要性を認識しているのだろうが、東京高検検事長の任期延長問題のときほど国民の理解と支持を得られていないように見える。日本学術会議会員の任命問題は直接的には政府との関係であろうが、大学の教職員や学生のみならず国民の理解と支持が鍵を握っていると思われる。日本学術会議や大学関係者の抵抗を後押しすべく、具体的で実践的な視点を提供する。

第三章は、日本学術会議会員の任命問題を法的観点から考察し、その主張や処置の是非を冷静に検討する。日本学術会議は、学術団体に行政機関の衣裳を着せた存在であり、実体は民間の学術団体そのものといってよく、行政機関としては異例な形態の存在である。日本学術会議は行政機関として存在している以上、日本学術会議法を行政機関の設置法の観点から考察し、その問題点を指摘することができる。

第四章は、日本学術会議問題に潜むつぎの問題として、国立大学の学長人事問題を指摘する。日本学術会議の例に照らせば、筑波大学のような国立大学では、学内選考された学長候補者の任命を拒否できることにもなるから、今回の日本学術会議会員の任命拒否判断は、学問の自由の侵害への第一歩となろう。他方で、任命拒否は日本学術会議が自由な軍事研究に反対していることに対する政府の反撃ともとれる。日本学術会議は学問の自由を守るものなのかそれを侵すものなのか、根本的な疑問について考えていく。

第五章は、「私立大学の自由」と「学問の自由」が衝突した希有な例として、明治学院大学事件を取り上げる。明治学院大学事件とは、大学当局が教授の授業を盗聴したり、授業で使う教科書を検閲したりして、大学の方針に反する教授らを解雇していた事件である。私立大学が「建学の精神」を守るために、授業の盗聴や教科書の検閲を慣例的に行い、組織的かつ計画的に学問の自由を侵害していたことを明らかにする。(本書より)


執筆者

細井克彦[第1章]大阪市立大学名誉教授・教育学
鈴木眞澄[第2章]龍谷大学名誉教授・法律学
清野 惇[第3章]広島修道大学名誉教授・法律学
平山朝治[第4章]筑波大学教授・経済学
寄川条路[第5章]元明治学院大学教授・倫理学

 

2022年6月13日刊
学問の自由と自由の危機 日本学術会議問題と大学問題
寄川条路 /編
定価=本体1000円+税 ISBN978-4-7845-1593-6 A5判ブックレット112頁

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投稿者: 社会評論社 サイト

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