|刊行情報| 歴史知のオントロギー 文明を支える原初性  石塚正英/著

先史・野生の諸問題を通して現在この地球上に生きて存在する意味を問う。

“この地球上に生きて存在していることの意味、自然環境と社会環境の只中に内在していることの意味、あるいは、人と自然が互いに存在を認め合う関係が指し示す意味、歴史知のオントロギーを問う。”

「……自然と人間、世界と地域、過去と現在、それらは相互に連環し、諸学は相互に連環している。それは歴史知を形成する。それは身体知を形成する。前近代に起因する知(経験知・感性知)と現代に特徴的な知(科学知・理性知)を時間軸上で連合する知を探究する。感性知と理性知を両極にして相互に往復運動をする、両者あいまって成立する知的パラダイムである。これこそが人類史の二一世紀的未来を切り拓く知、〔歴史知〕なのだ。(はしがきより)」


はしがき

第一章
先史社会を現代人はどう見たか
トインビー・ヤスパース・フレイザー
はじめに
一 アーノルド・ジョゼフ・トインビー
二 カール・テオドール・ヤスパース
三 ジェームズ・ジョージ・フレイザー
むすびに

 

第二章
先史文化を現代人はどう見たか
デュルケム・マリノフスキー・ラドクリフ= ブラウン
はじめに
一 自然崇拝(儀礼)と文明宗教(礼拝)
二 類型と進化︱母系と父系
三 氏族と家族
むすびに

 

第三章
リグ・ヴェーダの歴史知的討究 
プレ・インダスの提唱
はじめに
一 プレ・インダス文化と後継アーリア文化の継承関係
二 リグ・ヴェーダの先史・自然的特徴
三 リグ・ヴェーダの文明的特徴
むすびに

 

第四章
身体内共生儀礼としての食人習俗
はじめに
一 モガリと小野小町
二 事例紹介
三 分析・考察
むすびに

 

第五章
カラル遺跡(ペルー)十字形像の先史性
はじめに
一 先史からのタイムカプセル
二 カラル遺跡の遺物
三 先史の十字形像
むすびに

 

第六章
シンボルによる価値転倒
十字形像を事例に
はじめに
一 原像(具象)とシンボル(抽象)
二 十字形像とその諸類型
三 ハマンの磔刑とイエスの磔刑
四 原像(具象)が模写(抽象)に続く不自然
むすびに

 

第七章
キリスト教神話のドラマトゥルギー
グノーシス的解釈とフェティシズム的解釈
はじめに
一 神を霊的に知解する人間(GnostischeWeltグノーシス世界)
二 知識を食べるプラトンの魂(Ideenweltイデア世界)
三 キリスト(霊)を生きるパウロ(肉)(Geisterwelt聖霊世界)
四 キリストを食べる「最後の晩餐」(Herkunftswelt起原世界)
五 キリスト教神話のドラマトゥルギー
六 『ユダの福音書』にみる〔他我〕=もう一人の私
むすびに

 

第八章
〔父が子を生む(マタイ福音書)〕表現の歴史知的考察
はじめに
一 「マタイによる福音書」一章二節の検証
二 母方オジは父ではない
三 父が子を産む呪術「擬娩」
むすびに

 

第九章
ゲシュレヒターポリス(氏族遺制都市)とアヴンクラート(母方オジ権)
はじめに
一 カナン人とイスラエル人―農耕と遊牧
二 氏族(先史)と都市(文明)—〔氏族都市〕という形容矛盾
三 血縁(自然)と擬制(文化)―「父」という架空概念をめぐって
四 契約の箱(形像)と内容(事象)―ラバンの小像
むすびに

 

第十章
汎神論と物神論
ブルーノ・スピノザ・フォイエルバッハ
はじめに
一 フェティシズムとアニミズム
二 地中海神話に読まれるmater
三 神々の形像そのもの崇拝/四 儀礼と呪術
五 ジョルダーノ・ブルーノとベネディクトゥス・デ・スピノザ
六 フォイエルバッハの他我論
むすびに

 

第十一章
感性文化と美の文化
バウムガルテン・ヘーゲル・フレイザー
はじめに
一 文化の二類型―ドローメノンとドラマ
二 美醜の感性︱バウムガルテン『美学』から
三 原型的自然と模型的自然︱カントの批判哲学から
四 自然美は人間精神の反映 ―ヘーゲル『美学講義』から
五 自然はもう一人の私―フレイザー『金枝篇』から
むすびに

 

第十二章
未然形の純粋経験と連用形の歴史知
西田幾多郎小論
はじめに
一 端緒より出でて端緒に回帰する未然形
二  〔自然の法nomosphysikos 〕との連携
三 主客合一の端緒なく〔我・汝〕交互する連用形
むすびに

 

第十三章
先史と文明を仲介する前方後円墳の儀礼文化
はじめに
一 儀礼文化としての前方後円墳
二 技術(工人)は王権に従属せず
三 先史のキョウダイと文明の夫婦
四 玉と金/五 夷守と夷君
六 〔北陸汀線・信濃川遡上系〕の事例
むすびに

 

第十四章
母系制と姫彦制の関係 
高群逸枝『母系制の研究』に鑑みて
はじめに
一 母系制における母権と母方オジ権
二 高群逸枝『母系制の研究』に「母方オジ」を読み取る
三 母系と父系の相互関係
むすびに

 

第十五章
安藤昌益の自然観と社会観
災害と飢饉の江戸中後期を現在として生きつつ
はじめに
一 安藤昌益とその時代
二 自然観―自然と社会
三 社会観―文明と社会
四 アクチュアリティー
むすびに

 

第十六章
陶淵明の「心在」は「死してなお自然 とともにある」を意味する
はじめに
一 もう一人の私〔形と影・分身〕
二 よき人間 ・悪しき人間 〔帰園田居〕
三 婉曲的な体制批判〔擬古・無政府桃花源〕
四 交互運動の交点たる〔三種の人境〕
五 死生観〔生と死は対立・矛盾でなく連繋的〕
六 玄学思想
むすびに

 

第十七章
思想としての二・二六昭和維新
三島由紀夫『憂国』をまじえて
はじめに―歴史の断絶と連続
一 あらたに発見された富岡定俊保管資料について
二 証言集『二・二六事件と郷土兵』について
三 思想としての二・二六昭和維新
四 三島由紀夫の〔憂国〕
むすびに―郷土という時空における生活と文化

あとがき
初出一覧
索 引


石塚正英 著(いしづか まさひで)

東京電機大学名誉教授。NPO法人頸城野郷土資料室(新潟県知事認証)理事長。著作『石塚正英著作選【社会思想史の窓】』全6巻『革命職人ヴァイトリング―コミューンからアソシエーションへ』『地域文化の沃土 頸城野往還』『マルクスの「フェティシズム・ノート」を読む―偉大なる、聖なる人間の発見』ほか多数

 

2021年10月20日刊行予定
歴史知のオントロギー 文明を支える原初性
石塚正英/著
定価=本体3400円+税 ISBN978-4-7845-1881-4 A5判上製424頁


購入サイト(外部リンク)

Amazon

投稿者: 社会評論社 サイト

社会評論社 SHAKAIHYORONSHA CO.,LTD.