|刊行情報| 社会的連帯経済への道 続 未踏の時代の経済・社会を観る 井上良一著

新自由主義経済への対抗軸になりうる社会システムの考察。


目次

プロローグ

第1章 社会的連帯経済への道
1)「成熟社会」について
2)高度経済成長終焉に伴う3つの方向
3)日本経済の現段階をどう捉えるか
4)日本における社会的連帯経済の可能性
5)なぜ日本では社会的経済が浸透していかないのか

第2章 地方と国の関係
1)高度経済成長時代の遺産からの脱却
2)「地方の時代」再考
3)担い手の問題

第3章 資本主義経済の再生に向けて
1)新自由主義経済のもと、低迷する日本経済
2)需要力拡大政策への転換 日本の場合の難しさ
3)需要にポイントを置いた政策について
4)アメリカの混迷 トランプの出現
5)「れいわ新選組は維新勢力。維新は新撰組」
6)「 資本主義の新しい形」(諸富徹著、2021年1月)の読後感想
7) 武建一さんの本を読む「武建一が語る〜大資本はなぜ私たちを恐れるのか」読後感想
8)新自由主義にゆがむ公共政策(新藤宗幸著)

第4章 IT で日本は最先端を取り戻せるか
1)日本の組織はボトムアップ型情報システムを持っている
2)IT システムが日本で適合しないのは何故か
3)なぜ、日本のIT は遅れをとったか

第5章  政治主導と行政独裁〜政治がリーダーシップ発揮できる仕組みを考える
1)選挙は政策ではなく人間関係で決まる日本社会…なじみの構造
2)政治主導と行政独裁
3)全体の奉仕者について
4)政治制度の変革について
5)予算編成システムの課題、典型例としての査定システム
6)市民の政府

第6章 日本のビジネススタイルの課題
1)企業の活動スタイルについて
2)仲介業としての広告業について

第7章  教育システム、人材育成の形〜就学前、そして職業教育まで〜
1)就学前教育の重要性について
2)学校教育のあり方を考える
3)職業教育の場づくりについて
4)日本が抱えるいくつかの教育課題

第8章 コロナか、経済か
1) 新型コロナウィルスの経過をどう受け止めてきたか
2)経済とコロナの両立論を排す
3)「武漢日記」感想
4) 明らかにされた福祉の姿〜「新型コロナ禍の東京を駆ける」を読む

第9章 国際関係の今後
1)成熟社会化の進展
2)途上国も成熟することを考える時期に来ている
3)豊かなアジア〜対等関係の経済運営へ

参考文献等
エピローグ


*本書エピローグより

今まで考えてきたことを1つの象徴的な概念で表現することができると思うようになったのも確かです。本書において、述べたかった最大のポイントは、日本のこれからを考えたときに、「『企業の政府』から『市民の政府』への構造転換を図ることである」と結論づけても良いように思います。ここには、国から地方へという考え方も含意されています。

これは私の成熟社会論そのものから引き出される考え方でもあります。・・供給力が需要を遥かに超える社会になったときに、需要力を拡大することが、不可欠であり、それで経済は円滑な循環を作り出す。それを達成するためには、政治的な転換がなければならない。それがすなわち、「企業の政府」から「市民の政府」への転換ということに象徴されることになるということです。

「企業の政府」とは明治以来経済発展をひたすら求めてきた日本の官僚制度による政府であり、現在行きついている先が「新自由主義経済」といって良いと思います。一方、「市民の政府」は亡くなられた田村明先生が主張された政府のかたちでもありますが、ここに私としては、政府の構造自体を需要力拡大に向ける形に作り替えるという意味合いを込めることが出来ると考えました。「市民の政府」にあっては、企業ばかりでなく、協同組合、さまざまな非営利活動、社会的連帯経済の領域を包み込むものであると言えると思います。

そして、政府の資金が、全て、人々の需要力拡大に充てられるようになったときに、北欧型の高負担を容認する政府の構造も展望できるようになるということでもあります。今の状態で増税をしても、「企業の政府」のままですから、その増税分は、経済循環をさらに歪(いびつ)にする供給力増加に向かい、需要力増強には決して向かわないのです。

そして、この政府の構造の転換を図る前に、政治と行政、端的に言えば、政治家と官僚の立ち位置の見直しが不可欠と言わなければなりません。日本社会の牽引者について、基本的な見直しをしない限り、「市民の政府」はまだまだ遠い夢の世界といっても良いと思います。(著者)


*本書参考サイト「曼荼羅」

https://app.mandala.digital/ws-import.html?user=RyouichiInoue&repo=ssemandala&m=roadtossejapan

 


井上良一(いのうえ・りょういち)
1943年生まれ 1967年慶應義塾大学経済学部卒。神奈川県庁勤務。2004年3月同庁を定年退職。在職期間の半分以上、システム開発などの情報関連業務に従事。また、県在職中より、日本語の特質からくる日本社会の特徴について、関心を抱いてきた。現在:社会的連帯経済を推進する会の事務局の一員として活動。著書:『[なじみ]の構造〜日本人の時間意識』(1996年、創知社)、『「日本語人」のまなざし〜未踏の時代の経済・社会を観る〜』(2018年、社会評論社)

2022年1月7日刊
社会的連帯経済への道 続 未踏の時代の経済・社会を観る
井上良一著
定価=本体2700円+税 ISBN978-4-7845-1884-5 A5判328頁

投稿者: 社会評論社 特設サイト 目録準備室

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