| 詳報 | やすいゆたか/著 天照の建てた国☆日本建国12の謎を解く 万世一系の真相 社会評論社刊 2018年3月発売

思わずかじりつきたくなる日本古代史12の謎。

これを“歴史を見るメガネ=歴史知”のアプローチでクリアに解き明す! 古代史マニアはもちろん読まず嫌いな方にも噛みくだいて知的好奇心を満足させる毎日文化センター講演録。

定価=本体2300円+税 四六判並製284頁
ISBN978-4-7845-1568-4
2019年3月刊


まえがき


本書は、前著『千四百年の封印 聖徳太子の謎に迫る』(SQ選書)を踏まえて、毎日文化センター大阪梅田教室で十二回に渡り、講座『日本建国☆12の謎を解く』の講演を行った際の、全く新たに書き下ろしたテキストを更に手直しし、全体のダイジェストとして「序講」をつけたものです。

受講生には古代史マニアの方も、全く日本古代史に関して予備知識のない方もおられますので、中高生や主婦の方にも分かるように噛み砕き、古代史マニアの方にも知的好奇心を満足させられるように工夫したつもりです。

第一講から第十二講まで、それぞれ日本古代史に興味がある人ならどうしても知りたくなるような謎を、歴史知という「歴史を見るメガネ」で解き明かしています。

本年二〇一九年は奇しくも存命の天皇の代替わりにあたります。天皇家はかつては「万世一系の皇統」といううたい文句で、統治権を総攬したこともありますが、敗戦後は「人間宣言」を出され、平和と民主主義を国是とする日本国の国民統合の象徴としての在り方を模索されています。本書は、「万世一系の皇統」については、従来とは全く異なったアプローチで論じていますので、その点に注目して読んでいただければ興味深く読んでいただけると考えまして、副題に「万世一系の真相」を入れました。そして本題も日本国のはじまりが天照大神による海降り建国にあり、波乱万丈の上で七世紀に聖徳太子の摂政期にそれが再建されたことを鮮明にするために『天照の建てた国☆日本建国12の謎を解く』に改めました。

序講はダイジェストですから、全体の趣旨がつかめ、著者の問題意識が良く分かると思います。「神話を知らずに建国史を語れるか」という表題のように、古代史は好きだけれど、神話には興味なしとか、嫌悪を感じるという人が割りに多く、それがかえって日本古代史の理解を困難にしているのです。

日本の初期国家は神政政治として成立しますから、建国史を語る場合にどうしても現人神による建国という捉え方抜きでは語れません。現人神というと天皇のことしか頭に浮かばないようでは、建国史は語れないということです。これは古代史の素人だけの問題でなく、古代史研究の専門家でさえ、天照大神や月讀命の現人神が建国したという発想には驚いて腰を抜かすかもしれません。戦後の実証史学はその意味では、梅原猛張りに言いますと「一種の宗教的痴呆」の上で展開されたのです。

神話を重視すべきだと言っても、決して神道を信仰するように勧めているのではありません。あくまで神話の元の形を復元することが、日本建国史の謎を解き、「皇国」の万世一系の真相に迫るのに不可欠だということです。その点くれぐれも誤解のないように願います。

序講を読まれたら、後は、第一講から読み進められた方が納得しやすいですが、読者はまず自分の関心のあるものから読まれても、そこで生じた疑問は、別の講義の内容で解けるように成っていますから、先ず一番関心あるのを読まれてから、最初に戻るのもいいでしょう。

著者


目 次


まえがき

 

序 講 神話を知らずに建国史を語れるか ─神話を知らない子どもたちに─

1 君は天照大神を見たか?
2 現人神とは何か?
3 天照大神は本当に高天原の主神だったのか
4 三貴神の三倭国建国
5 三種の神器で建国史の謎解き
6 三度日は昇った。

第一講 『隋書』俀国伝の謎 ─天照大神は主神でなかった─

1 「天未明時出聴政」の仰天
2 古代の神観念 
3 八咫の鏡と天照大神の現人神 
4 夜中に太陽神を祀ったか 
5 推古女帝が兄で厩戸王は弟か? 
6 阿毎多利思比孤は厩戸王か? 
7 倭国は無為自然のユートピア?
8 主神の差し替えとその封印

第二講 天照大神の謎 ─男神でしかも大和政権の祟り神だった─

1 神武天皇と崇神天皇の違いは何か?
2 宮中で祀られた天照大神
3 天照大神は何故祟り神とされていたのか?
4 天照大神は元々男神だったのでは
5 元伊勢─天照大神の彷徨
6 伊勢大神と天照大神

第三講 三貴神の謎 ─天照大神は河内に月讀命は筑紫に建国─

1 現人神、現御神とは何か?
2 天下に主たる者
3 海原と高海原(高天原)はどこにあったか?
4 天照大神の海降り建国
5 天照大神の死と再生、生駒の岩戸
6 ムーランド月地が筑紫の語源か?

第四講 宇気比の謎 ─月讀命と差し替えられた天照大神─

1 月讀命と差し替えられた天照大神

第五講 出雲帝国形成の謎 ─須佐之男の誤解と大国主の活躍─

1 須佐之男命の狼藉と神逐ひ
2 二人の須佐之男命
3 八岐大蛇退治と出雲国再建
4 大穴牟遅命─殺されても生き返らされる
5 八千矛神、結婚戦略で帝国拡大
6 第一次「日本国」の滅亡

第六講 国譲り説話の謎 ─高天原(高海原)の宗主権と倭国統合の矛盾─

1 復習、大国主命の畿内侵攻と饒速日大王の死
2 高天原からの二人の使者
3 平和で豊かな国造り 武御雷軍の奇襲計画
4 国譲りの儀礼
5 饒速日王国の再建

第七講 神武東征の謎 ─筑紫倭国は残ったか?─

1 ハツクニシラススメラミコトについて
2 磐余彦東征は本当にあったのか?
3 天忍穂耳命が邇邇藝命に天降りを振った理由
4 一夜妻の木花佐久夜比売
5 神武東征の大義名分はなんだったか?
6 筑紫倭国は神武東征後も残った

第八講 邪馬台国の謎 ─邪馬台国大和説で納得できるか─

1 邪馬台国の「やまと」は何処か?
2 倭国は統一されていたのか?
3 卑弥呼とは誰か?
4 前方後円墳・三角縁神獣鏡の分布
5 邪馬台国をたずねて旅程をたどる
6 邪馬台国東遷説の可能性

第九講 英雄時代の謎 ─景行天皇と倭建命は架空の英雄か─

1 景行天皇架空説の根拠
2 熊襲による筑紫倭国滅亡
3 景行天皇の熊襲攻略戦略─敵の内紛を利用する
4 倭建命は実在したか?
5 建国説話としてのヤマトタケル
6 倭国の東西分裂へ

第十講  神功皇后伝説の謎 ─倭国東西分裂と河内王朝の形成─

1 父歿後三十四年に誕生した帯中彦
2 住吉明神はもののまぎれの神か?
3 七世紀が神功皇后伝説のネタか?
4 憑依したのは天照大神か?
5 倭国の東西分裂の理由
6 高海原が天空に上げられて高天原に

第十一講 聖徳太子の謎 ─『憲法十七条』と神道大改革─

1 聖徳太子に『憲法十七条』は書けたか?
2 話し合って決める和の精神
3 厩戸王の捨身飼虎 太子信仰は生前からか?
4 天皇は伊勢神宮をどうして参拝できなかったのか?
5 天之御中主神から天照大神への主神差し替え

第十二講 天皇号開始の謎 ─日本国再興と封印された改革─

1 主神差し替えの代償としての天皇号
2 法隆寺薬師如来像光背銘をめぐって
3 法隆寺釈迦三尊像光背銘をめぐって
4 封印された神道改革

著者紹介

やすいゆたか 1945年生まれ。立命館大学文学部史学科日本史学専攻卒業。同大学院文学研究科哲学専攻修士課程修了。予備校講師、立命館大・大阪経済大学などの非常勤講師を歴任。毎日文化センター講師、あすと市民大学学長、『ウェブマガジンプロメテウス』編集長。

主要著作  『人間観の転換―マルクス物神性論批判』(青弓社 1986年)『歴史の危機 ─ 歴史終焉論を超えて』(三一書房 1995年)。『キリスト教とカニバリズム─キリスト教成立の謎を精神分析する 』 (三一書房 1999年)『イエスは食べられて復活した─バイブルの精神分析新約篇』(社会評論社 2000年)『評伝 梅原猛─哀しみのパトス』(ミネルヴァ書房 2005年)『千四百年の封印 聖徳太子の謎に迫る』(社会評論社 2015年)『フェティシズム論のブティック 』 (石塚正英と共著 論創社 1998年)。

主要テキスト
『やすいゆたか著作集』に収録
http://yutakayasui.html.xdomain.jp/shoin/index.html

ホームページ『やすいゆたかの部屋』
http://yutakayasui.html.xdomain.jp/
『ウェブマガジンプロメテウス』
https://mzprometheus.wordpress.com/ 


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